「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」。子どものころ、鬼ごっこの鬼を決めたり、お菓子や遊び道具を選んだりするときに、この歌を口ずさんだ記憶がある人も多いのと考えられます。実は、この数え歌には全国共通の決まった歌詞がありません。「なのなのな」「柿の種」「鉄砲撃ってバンバンバン」など、続きのフレーズは地域や育った環境によって大きく異なります。
2026年現在も親しまれている「どちらにしようかな」は、単なる子どもの歌ではなく、遊びの中で選択や順番を決めるために受け継がれてきたわらべうたです。由来や基本的な意味、地方別の歌詞、鬼決めでの使い方を整理すると、なぜ同じ歌なのに続きがこれほど違うのか、その理由も見えてきます。
【意味を解説】「どちらにしようかな」は何を決める歌?

「どちらにしようかな」は、複数の選択肢から一つを決めるときに使われる、子どもの数え歌です。
一般的には、歌いながら候補を一つずつ指で示し、最後の音に当たった人や物を選びます。
例えば、鬼ごっこで鬼を一人決めたい場合、参加者を順番に指さしながら歌います。最後の音を指された子どもが鬼になる、という仕組みです。
「どちらにしようかな」の基本的な意味
歌の冒頭にある「どちらにしようかな」は、そのまま選択に迷っている状態を表しています。
続く「天の神様の言う通り」という言葉には、自分だけで決めるのではなく、神様に選択を委ねるような表現が使われています。
ただし、実際に宗教的な意味を込めて歌うものではありません。遊びの中で選択の結果を受け入れるための、親しみやすい言い回しとして機能しています。
この歌の役割を整理すると、次のようになります。
- 選択: お菓子や遊び道具など、複数の候補から一つを選ぶ。
- 鬼決め: 鬼ごっこやかくれんぼで最初の鬼を決める。
- 順番決め: 遊びを始める順番や担当者を決める。
- 役割分担: グループ遊びで誰が何を担当するか決める。
つまり、歌そのものが遊びなのではなく、遊びを円滑に始めるための選択方法なのです。
数え歌と「となえうた」の違い
一般には数え歌として知られていますが、民俗学的には「となえうた」という分類が重要になります。
となえうたとは、一定のリズムや言葉を唱えながら、人や物を選ぶために使う歌のことです。
TBS NEWS DIGが2022年12月に報じた山陰放送の特集では、同志社大学文化情報学部の河瀬彰宏准教授が、この歌をわらべうたの「となえうた」として解説しています。
特徴的なのは、歌詞の意味だけでなく、音の区切りやリズムに合わせて指を動かす点です。
そのため、歌詞が地域によって異なっても、候補を順番に指して最後に選ぶという基本的な仕組みは共通しています。
【歌詞と続き】「天の神様の言う通り」の後はどうなる?
「どちらにしようかな」の歌詞には、広く知られている基本形があります。
一方、その後に続くフレーズには多くの種類があり、同じ地域で育った人同士でも違う歌詞を覚えていることがあります。
よく知られている基本の歌詞
最も一般的な形として知られているのが、次のフレーズです。
どちらにしようかな
天の神様の言う通り
この後に「なのなのな」「柿の種」「鉄砲撃ってバンバンバン」などの言葉を付け加えるパターンがあります。
「どれにしようかな」と歌い始める人もおり、「どちら」と「どれ」の違いも地域や家庭によるバリエーションの一つです。
代表的な続きのバリエーション
実際に報告されている歌詞には、次のようなものがあります。
| 続きのフレーズ | 特徴 |
|---|---|
| なのなのな | 短く、リズムを整えるような言葉 |
| 鉄砲撃ってバンバンバン | 擬音を使った遊びらしい表現 |
| 柿の種 | 関西などの投稿例でも確認される言葉 |
| あぶらむし | 昆虫の名前を取り入れた表現 |
| ケケケのけ | 音の繰り返しを楽しむ表現 |
| あっぷっぷ | 顔遊びにも通じる親しみやすい言葉 |
| ぎっこんばっこん | シーソーなどを連想させるリズミカルな言葉 |
これらは全国共通の歌詞ではなく、実際に各地で報告されているバリエーションです。
「なのなのな」や「柿の種」に意味はある?
気になるのが、歌詞の中に登場する不思議な言葉の意味です。
例えば「なのなのな」は、通常の会話で使う言葉というより、歌のリズムを整えるような響きを持っています。
「柿の種」も、選択そのものと直接関係する言葉ではありません。
こうしたフレーズは、子どもたちが遊びの中で言葉を付け足したり、覚えやすい音を繰り返したりすることで受け継がれてきたものと考えられます。
すべての言葉に明確な由来や意味があるわけではありません。意味よりも、声に出したときの面白さやリズムが優先されるところに、わらべうたらしさがあります。
【地域差を比較】地方別に見る「どちらにしようかな」の歌詞
この歌の大きな特徴は、地域によって続きが違うことです。
同じ「天の神様の言う通り」から始まっても、その後の展開は驚くほど多様です。
関東地方では「なのなのな」や鉄砲の歌詞
関東出身者から寄せられた歌詞の例には、次のようなものがあります。
- 鉄砲撃ってバンバンバン
- もひとつおまけにバンバンバン
- 柿の種
- なのなのな
ニッポン放送 NEWS ONLINEが2016年に紹介したリスナー投稿にも、こうしたフレーズを組み合わせた歌詞が登場しています。
ただし、関東地方で一つの歌詞に統一されているわけではありません。
関西地方では「柿の種」や「あっぷっぷ」
関西地方の投稿では、「柿の種」や「あっぷっぷ」が登場します。
2024年11月のラジオ関西の特集でも、リスナーから寄せられた歌詞に「おならの音」「柿の種」「鉄砲」「アブラムシ」などの言葉が見られました。
特に兵庫県をはじめとした関西地域から、似た言葉を含む複数のバリエーションが寄せられています。
山陰地方では市町村ごとにも違いがある
TBS NEWS DIGの山陰放送による2022年の調査では、島根県内でも地域によって異なる歌詞が紹介されました。
例えば、松江市では「ぎっこんばっこん」、出雲市では「あべべのべ」、大田市では「ゲゲゲの毛虫」といった表現が登場しています。
同じ島根県内でも、言葉の組み合わせが違うことが分かります。
地域別の歌詞の比較表
実際の放送やリスナー投稿で確認できる例を整理すると、次のようになります。
| 地域・出典 | 報告された歌詞の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 関東・ニッポン放送の投稿 | なのなのな、鉄砲撃ってバンバンバン、柿の種 | 擬音や短い言葉を組み合わせる |
| 関西・ラジオ関西などの投稿 | あっぷっぷ、柿の種、アブラムシ | 音の響きやユーモラスな言葉が登場 |
| 島根県松江市 | ぎっこんばっこん、鉄砲撃ってボンボンボン | リズムの繰り返しが特徴 |
| 島根県出雲市 | あべべのべ、アイスクリームが溶けるまで | 長い言葉を続けるタイプ |
| 島根県大田市 | ゲゲゲの毛虫が屁をこいた | 身近な言葉やユーモアを取り入れる |
| 沖縄・ニッポン放送の投稿 | ちんぷんかんぷんね、あぶらむし、カブトムシ | 昆虫や言葉遊びが登場 |
※地域を代表する唯一の歌詞を示すものではありません。各報道や投稿で紹介された実例です。
なぜ同じ地域でも歌詞が違うのか
地域差が生まれる理由について、同志社大学の河瀬准教授は、基本のリズムに地域や郷土性のある言葉が当てはめられていくという考え方を紹介しています。
つまり、最初から完成された歌詞が全国に広がったというより、子どもたちが遊びながら言葉を付け加え、少しずつ変化させてきたということです。
加えて、学校や家庭、友人関係など、子どもが日常的に接する小さなコミュニティーも伝承に影響します。
同じ県内でも違う歌詞が生まれるのは、こうした伝承の仕組みが関係しているのです。
【由来と歴史】「どちらにしようかな」はいつから歌われている?
「どちらにしようかな」の正確な発祥地や、最初に歌われた年代は明らかになっていません。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、2005年に埼玉県立久喜図書館が受け付けた、この歌の発祥と原型を調べる質問が登録されています。
その調査では、全国各地のバリエーションを紹介する資料は見つかったものの、元になった歌やオリジナルの形を特定する記述は見つかりませんでした。
1911年頃には記録されていたわらべうた
TBS NEWS DIGの2022年の特集では、河瀬准教授への取材を通じて、この種のわらべうたが1911年頃には見つかっていたことが紹介されています。
これは少なくとも100年以上前に存在していたことを示す手掛かりです。
ただし、1911年が誕生した年という意味ではありません。それ以前から口伝えで歌われていた可能性もあります。
柳田國男や北原白秋の時代から続く研究
わらべうたの研究では、歌詞だけでなく、遊び方や動作、音のリズムも重要な要素として扱われてきました。
民俗学者の柳田國男や詩人・童謡作家の北原白秋も、わらべうたを歌詞から分類する試みに関係した人物として、河瀬准教授の解説で名前が挙がっています。
しかし、子どもの歌は遊びの目的や動作と結び付いているため、歌詞だけで整理するのは簡単ではありません。
「どちらにしようかな」も、その場の子どもたちが言葉を追加できる性質を持っています。
由来を考えるうえで重要な3つのポイント
- 口承文化であること: 楽譜や作者名が決まった作品ではなく、子どもたちの間で口伝えに受け継がれてきた。
- 遊びと一体になっていること: 指さしや選択など、実際の動作とリズムが結び付いている。
- 即興性があること: その土地や時代の言葉が歌詞に取り込まれ、新しいバリエーションが生まれる。
したがって、特定の人物が作詞した歌として発祥をたどるよりも、子どもの遊び文化の中で伝承・変化してきた歌として捉えるのが適切です。
【鬼決めと遊び方】鬼ごっこではどうやって使う?
「どちらにしようかな」は、鬼ごっこなどの遊びで最初の役割を決めるときにも使われます。
特に、参加者の中から一人だけ鬼を選びたい場合に便利です。
基本的な鬼決めの手順
1. 参加者全員が輪になって並ぶ。
2. 最初に指をさす人を決める。
3. 「どちらにしようかな」と歌いながら、一音または一拍ごとに参加者を指す。
4. 最後の音が当たった人を鬼にする。
5. 鬼が決まったら、あらかじめ決めたルールに従って鬼ごっこを始める。
例えば、5人で遊ぶ場合でも、歌詞の長さや参加人数によって、同じ子どもに複数回指が当たることがあります。
歌詞の途中で勝手に指す順番を変えたり、結果が気に入らないからやり直したりすると、選び方が不公平に感じられることもあります。
最初にルールを決めておくと、スムーズに遊べます。
鬼決め以外にも使われる場面
この歌が使われるのは鬼ごっこだけではありません。
- かくれんぼで最初に鬼になる人を決める。
- 追いかけっこで最初に追いかける人を決める。
- 遊具を使う順番を決める。
- お菓子やおもちゃを選ぶ。
- グループ遊びの役割を決める。
特別な道具を用意する必要がなく、参加者全員が同じルールで結果を受け入れやすいことが利点です。
「おにきめ、おにきめ」との違い
鬼を決めるわらべうたには、「どちらにしようかな」以外にもさまざまな種類があります。
大阪音楽大学の研究紀要に掲載された、長谷川真由氏による幼児の自発的な歌の研究では、K市内の幼稚園を対象とした5年間の調査で、「おにきめ、おにきめ、鬼じゃないよ」という歌が鬼決めの場面で紹介されています。
この研究では、「おにきめ、おにきめ」という歌が報告された一方、「どちらにしようかな、天の神様の」という歌も確認されています。
つまり、鬼決めの歌は一種類ではありません。
「どちらにしようかな」は選択全般に使える歌であり、「おにきめ」のように最初から鬼決めを目的とした歌とは、使い方や表現が異なります。
【プロの結論】歌詞の違いこそ「どちらにしようかな」の面白さ
「どちらにしようかな」を調べると、最も興味深いのは、歌詞が違っていても遊びの仕組みが共通していることです。
「なのなのな」が正しいのか、「柿の種」が正しいのかという疑問は、実はこの歌の性質を考えると少し違った見方ができます。
全国共通の正解歌詞は存在する?
学校で習う童謡や、作詞者・作曲者が明確な楽曲とは異なり、この歌には全国共通の公式歌詞がありません。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースでも、原型を特定する調査は未解決となっています。
そのため、ある人が「天の神様の言う通り、なのなのな」と覚えていても、別の人が「柿の種」や「鉄砲撃ってバンバンバン」と覚えていても、どちらかが間違いというわけではありません。
歌詞よりもリズムが重要だった
河瀬准教授の分析で興味深いのは、歌詞だけでなく拍の構造に注目している点です。
TBS NEWS DIGの特集では、基本的に4拍のフレーズと、3拍・5拍・7拍に休みの1拍を加えたフレーズなどの組み合わせが紹介されています。
例えば、島根県松江市の「ぎっこんばっこん」を含む歌詞も、拍ごとに区切ると一定のリズム構造を持っています。
これは、子どもたちが自由に言葉を付け足しているように見えても、歌として成立させるためのリズムが保たれていることを示しています。
言葉は変わっても、遊びの仕組みとリズムが受け継がれる。これが、この歌の伝承における重要な特徴です。
地域の歌詞を比較するときの判断基準
自分の知っている歌詞と他人の歌詞が違っていたときは、次の3点に注目すると理解しやすくなります。
- 地域: どこで育った人が歌っていたのか。
- 世代: いつ頃、子ども時代を過ごしたのか。
- 家庭・遊び仲間: 学校や家庭など、どのような集団で覚えたのか。
都道府県別の歌詞一覧は参考になりますが、県境を越えた伝承もあり、同じ県内でも違いがあります。
地域差を楽しむための資料として見るのがよいでしょう。
2026年になっても、この歌の面白さは変わりません。昔の歌詞をそのまま覚えている人もいれば、子どもたちの間で新しい言葉に変化している場合もあります。
【どちらにしようかな】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「どちらにしようかな」の正しい歌詞は何ですか?
A1:全国共通の正しい歌詞はありません。「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」という基本形の後に、「なのなのな」「柿の種」「鉄砲撃ってバンバンバン」など、地域や家庭によって異なる言葉が続きます。
Q2:「どちらにしようかな」の続きで最も有名なのは何ですか?
A2:「なのなのな」「柿の種」「鉄砲撃ってバンバンバン」などがよく知られています。ただし、地域や世代によって親しまれているフレーズは異なります。
Q3:「どちらにしようかな」は何のための歌ですか?
A3:複数の候補から一つを選ぶための歌です。鬼ごっこの鬼決め、かくれんぼの役割決め、お菓子選び、順番決めなどに使われます。
Q4:「どちらにしようかな」の発祥はどこですか?
A4:正確な発祥地は分かっていません。1911年頃には記録があったと紹介されていますが、それが誕生した年という意味ではありません。
Q5:「どちらにしようかな」は数え歌ですか、わらべうたですか?
A5:どちらも間違いではありません。一般には子どもの数え歌として親しまれていますが、民俗学的には、候補から一つを選ぶ「となえうた」に分類されるわらべうたです。
Q6:鬼ごっこの鬼を決めるとき、最後に指された人が鬼になるのですか?
A6:一般的な使い方では、最後の音に当たった人が鬼になります。ただし、遊びの集団によってルールが異なる場合があります。最初に決め方を共有しておくと公平です。
まとめ:「どちらにしようかな」は地域と世代で変わる子どもの文化
「どちらにしようかな」は、鬼ごっこの鬼決めや順番決め、物を選ぶ場面などで使われる、昔ながらの子どもの数え歌です。
基本の「天の神様の言う通り」というフレーズは広く知られていますが、その後に続く歌詞には、地域や家庭によって多くの違いがあります。
「なのなのな」「柿の種」「あぶらむし」「鉄砲撃ってバンバンバン」など、どれも子どもたちの遊びの中で受け継がれてきた表現です。
発祥地や原型は明らかになっていないものの、1911年頃には記録があったとされ、100年以上にわたる伝承の歴史を持つことがうかがえます。
大切なのは、どの歌詞が正解かを決めることではありません。歌詞が違っても、みんなで声を合わせ、最後の一音で選択を決めるという遊びの楽しさは共通しています。
自分が子どもの頃に歌っていたフレーズを家族や友人と比べてみると、地域や世代による違いが見えてくるはずです。
参考資料: 国立国会図書館レファレンス協同データベース、TBS NEWS DIG・山陰放送、ニッポン放送 NEWS ONLINE、大阪音楽大学研究紀要、ラジオ関西。