大相撲の懸賞は、企業や団体が自由に好きな取組を選んで申し込める広告協賛制度だ。ただし、どの取組にも無条件で懸賞を付けられるわけではない。
日本相撲協会が公表している申込条件では、懸賞を付けられるのは幕内の取組のみ。応援している力士の取組や、特に注目している一番を指定できる。
懸賞を申し込むための最低費用
公式サイトに掲載されている基本条件は、1日1本以上、1場所15本以上。15日間の本場所で最低15本を申し込む場合、必要な費用は次のようになる。
- 懸賞1本:7万円(税込)
- 追加1本:7万円(税込)
- 1場所15本:105万円(税込)
- 1場所30本:210万円(税込)
- 1場所60本:420万円(税込)
15本を申し込む場合、基本費用は105万円。追加は1本単位で受け付けられるため、特定の力士や取組への応援を増やすこともできる。
スポンサーになると何ができる?
懸賞を申し込むと、スポンサーには主に3つの広告機会が与えられる。
- 取組表への掲載:会場の入場者に配られる取組表に提供者名が印刷される。
- 場内放送:対象取組の直前にスポンサー名などが読み上げられる。
- 懸賞旗の掲示:呼出しがスポンサーの旗を掲げて土俵を一周する。
提供者名は、取組表掲載用および館内放送用の原稿として、活字15文字以内で作成する。懸賞旗はスポンサー側で制作して持ち込む必要があり、協会がデザインを制限している。
企業にとっては、単なる賞金提供ではなく、観客への認知拡大やブランドイメージの向上を狙える仕組みだ。
2026年は大学やテレビ局もスポンサーに
2026年9月場所では、懸賞の申し込みに新たに15社が参加したと報じられた。
注目されたのが、総合大学として初めて懸賞を申し込んだ拓殖大学だ。同大学出身の藤凌駕、朝白龍の取組に懸賞を出した。また、BSフジもドラマ「踊る大捜査線」などのロゴをあしらった懸賞旗を掲出した。
こうした事例からも、懸賞のスポンサーは一般企業の商品広告だけに限らず、学校、放送局、地域に関係する団体などへ広がっていることが分かる。
【懸賞金の上限は60本】2026年最新の本数と記録

人気力士の取組では、懸賞旗が何十本も連続して土俵を回ることがある。では、1つの取組に何本まで懸賞を付けられるのだろうか。
日本相撲協会の公式クイズによると、現在の原則的な上限は1取組につき60本だ。
なぜ上限60本になった?
2006年1月場所から、1つの取組に付けられる懸賞は原則50本までという制限が設けられた。
しかし、2015年1月場所の千秋楽など、特定の取組に懸賞の申し込みが集中するケースが発生。2017年3月場所からは、原則60本までに引き上げられた。
日本相撲協会の2025年11月の公式クイズでも、1取組の上限として60本が正解とされている。
なお、森永賞などの特別な賞は別枠で扱われるケースがあるため、報道や記録上では60本を超える掲出数が登場することもある。
60本獲得すると力士はいくら受け取る?
通常の懸賞60本を獲得した場合、スポンサーの支払総額は420万円となる。
- スポンサーの支払総額:420万円
- 協会手数料:60万円
- 勝ち力士の獲得額:360万円
- 土俵上で受け取る現金:60万円
- 納税充当金:300万円
1回の取組でこれだけの金額が動くことになる。人気力士同士の対戦や優勝争いが佳境を迎えた取組にスポンサーが集中するのも、懸賞制度の特徴だ。
2026年は懸賞申し込みが過去最高水準に
2026年の大相撲では、懸賞への企業・団体の参加が活発になっている。
日刊スポーツなどの報道によると、2026年1月場所の懸賞申し込み総数は3,469本。実際の掲出本数も3,355本となり、当時の過去最多を更新した。
さらに2026年5月場所では、申し込み総数が4,241本に達した。休場などの影響で実際の掲出本数は3,563本となったものの、申し込み段階では大きな記録を残している。
2026年9月場所も申し込み総数は3,895本に達し、5月場所に続く高水準だった。
この数字を見る際には、申し込み本数と実際の掲出本数を区別する必要がある。力士の休場や不戦勝によって、申し込まれた懸賞がそのまま掲出されない場合があるためだ。
懸賞金の総額が増えている背景には、人気力士への企業の注目だけでなく、テレビや動画を通じて懸賞旗が広告として露出する機会があることも関係している。
【大相撲懸賞金の歴史】平安時代から続く勝者への贈り物
大相撲の懸賞は、現在のような現金制度になる前から存在していた。日本相撲協会の公式クイズでは、その起源を平安時代の相撲節会にまでさかのぼって紹介している。
平安時代は米や布地が懸賞だった
平安時代の相撲節会では、勝った力士に麻や絹などの織物、衣類、米といった品物が贈られていた。
当時は現在のような賞金ではなく、生活に役立つ品物を勝者に与える形式だった。武家相撲の時代にもこの習慣は続き、弓や矢などの武具が懸賞として用いられた。
現在も千秋楽の「これより三役」で勝者に矢や弦が贈られるのは、こうした古い懸賞の名残とされている。
江戸時代から現代の賞金制度へ
江戸時代には、力士に対する祝儀として「纏頭(はな)」が盛んになった。観客から力士に祝儀を贈る慣習で、相撲興行の盛り上がりとも深く関係していた。
しかし、明治42年(1909年)には投げ纏頭が禁止される。その後、現在につながる賞金形式が整備され、昭和30年(1955年)に懸賞を一律1万円、または1万円以上の商品とする基準が定められた。
2019年には懸賞金が1本6万2,000円から7万円に引き上げられ、同年9月場所から適用。2025年5月には現金支給と納税充当金の配分が見直された。
懸賞金制度は、伝統を残しながら、スポンサー広告や税務管理など、時代に合わせて運用を変えてきた制度でもある。
【大相撲の懸賞金に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:大相撲の懸賞金は1本いくらですか?
A1:2026年現在、1本7万円(税込)です。協会手数料が1万円、勝った力士の獲得額が6万円です。
Q2:懸賞金のうち土俵上で現金1万円しか受け取れないのはなぜですか?
A2:2025年5月場所から支給方法が変更されたためです。力士の獲得額6万円のうち、1万円を現金で渡し、5万円を本人名義の納税充当金として預かる方式になりました。大量の現金を持ち歩くリスクや協会の現金管理業務を軽減する目的があります。
Q3:不戦勝でも懸賞金はもらえますか?
A3:もらえません。日本相撲協会の公式クイズでも、不戦勝の場合は懸賞が取り下げられると説明されています。対戦相手の休場によって勝ち星が付いても、実際の取組が行われないため懸賞金の受給対象にはなりません。
Q4:1つの取組に懸賞金は何本まで付けられますか?
A4:原則60本です。2017年3月場所から現在の上限が適用されています。特別な賞は別枠となる場合があります。
Q5:企業が懸賞を出すにはいくら必要ですか?
A5:1本7万円で、最低申込条件は1日1本以上、1場所15本以上です。15本を申し込む場合は合計105万円(税込)となります。
Q6:懸賞金は幕内以外の取組にも付けられますか?
A6:日本相撲協会の公式案内では、懸賞を付けられるのは幕内取組のみとされています。十両以下の通常の取組は対象外です。
まとめ:大相撲の懸賞金は7万円、現金1万円と納税充当金5万円が現在の仕組み
大相撲の懸賞金は、2026年現在も1本7万円(税込)。その内訳は、協会手数料1万円、勝ち力士の獲得額6万円となっている。
2025年5月場所からは、力士が土俵上で受け取る現金が3万円から1万円に変更され、残る5万円は本人名義の納税充当金として預けられるようになった。獲得額そのものが減ったわけではない。
また、企業や団体は1場所15本、105万円から懸賞を申し込める。懸賞旗の掲示や場内放送、取組表への掲載を通じて広告効果を得られるため、企業のブランド戦略と大相撲の興行を結び付ける役割も担っている。
2026年には懸賞申し込みが4,000本を超える場所も登場し、スポンサーの関心は高まっている。今後も懸賞金の金額だけでなく、企業参加の広がりや支給方法の変化にも注目したい。
懸賞旗が土俵を回る光景は、単なる広告演出ではない。勝負に懸けられた賞金であり、企業と力士、そして相撲文化をつなぐ仕組みなのである。
主な情報資料:日本相撲協会公式サイト「懸賞について」「大相撲クイズ」、日刊スポーツ(2025年5月9日・11日、2026年1月・5月)、デイリースポーツ(2026年9月)など。