発明家・化学技術者として知られる村木風海(むらき・かずみ)氏。17歳で炭素回収技術研究機構(CRRA)を創設し、家庭やオフィスで二酸化炭素を回収する装置「ひやっしー」を開発した人物です。
東京大学への推薦入学、卒業を目前にした満期退学、研究成果をめぐる議論など、その経歴には多くの転換点があります。さらに2026年4月にはCRRAの役員体制が変更され、村木氏は創業者兼CEOとして研究開発を主導する立場になりました。
一方、ひやっしーについては、回収率の高さを評価する声がある一方、装置の製造や電力消費まで含めた環境負荷を疑問視する専門家もいます。回収率84%という数字だけでは、地球温暖化対策としての実力を判断できません。
【2026年最新】村木風海の現在は?CRRA新体制での役職と活動
2026年11月現在、村木風海氏の活動の中心は、炭素回収技術研究機構株式会社(CRRA)での研究開発と事業展開です。
最も大きな動きは、2026年4月1日付で発足した新役員体制です。CRRAの公式発表によると、村木氏は代表取締役機構長・創業者兼CEOに就任し、笹原隆史氏が代表取締役社長兼COOを務めることになりました。
2026年4月に変わったCRRAの役割分担
新体制の特徴は、研究開発と経営・事業運営の責任を明確に分けたことです。
村木氏は機構長として研究開発を中核に据え、CO₂回収技術の深化と社会実装を推進します。一方、笹原氏は代表取締役社長として、経営や事業運営、事業基盤の確立を担当します。
これは単なる肩書きの変更ではありません。研究者として技術を生み出す役割と、その技術を市場に届ける役割を組織的に分担する動きです。
研究開発型のスタートアップにとって、技術の完成と事業の継続性は別々の課題です。村木氏が研究に集中できる体制を整えながら、経営面を笹原氏が統括する構造には、CRRAの事業拡大を意識した狙いがうかがえます。
炭素回収技術研究機構とはどんな組織?
CRRAは、CO₂の直接回収や利活用を中心に研究する独立系研究機関です。
2017年10月5日に任意団体として創立され、2020年4月7日に一般社団法人として法人化。さらに2024年5月7日には株式会社が設立されました。
株式会社の設立時には、一般社団法人を主要株主として残しながら、事業を移管する組織再編が行われています。現在の会社概要でも、一般社団法人が主要株主として掲載されています。
CRRAの研究テーマは、家庭用・オフィス用の小型装置だけではありません。
- 大気中からCO₂を回収する直接空気回収(DAC)
- 新しいCO₂吸収剤の研究開発
- 回収したCO₂から燃料や化成品を合成するC1化学
- 火星環境での燃料製造や生命維持技術
会社概要に掲載された研究員数は7名で、役員、雇用社員、業務委託などを含む数字です。
2026年6月18日には、第4回公募出資の実施も発表されました。募集上限は5,750万円で、閉鎖環境における農業分野でのCO₂利活用を次の社会実装テーマとして掲げています。これは募集の上限額であり、実際の調達完了額とは区別する必要があります。
同年7月には採用情報も更新されており、CRRAは研究開発だけでなく、組織と事業の拡張にも取り組んでいます。
【経歴・学歴】村木風海はなぜ東大を中退した?異能vationから現在までの年表
村木風海氏は2000年8月18日生まれ、山梨県出身です。幼少期から化学に関心を持ち、小学4年生だった2010年に化学者としての活動を始めたと、所属事務所のホリプロ公式プロフィールで紹介されています。
その後、高校生で研究組織を立ち上げ、東京大学に推薦入学するという異例の経歴を歩みました。
総務省の異能vation採択が大きな転機に
2017年、高校2年生だった村木氏の研究は、総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)における異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に本採択されました。
この採択を契機に、村木氏は炭素回収技術研究機構を創設し、17歳で機構長に就任します。同年12月には、CO₂回収装置「ひやっしー」の初号機が完成しました。
2018年には21台を製造し、山梨県北杜市の小中学校17校と市役所2か所に設置して実証実験を実施しています。
東京大学への入学から満期退学まで
2019年4月、研究実績を評価され、東京大学に推薦入試で入学。教養学部前期課程の理科一類に所属しました。
2021年には工学部化学生命工学科へ進学し、専門的な研究に取り組みます。
しかし、2023年3月31日、大学4年生の終わりに満期退学を発表しました。卒業まであと半年という時期だったこともあり、大きな話題になりました。
ENCOUNTの2023年4月のインタビューでは、本人が退学を決断した背景について説明しています。
「辞める一番の理由は、温暖化を止める研究に専念するためです。」
本人によると、東大の研究室での活動とCRRAの経営・研究を両立することが難しく、研究所の仕事は深夜に行う状況だったといいます。
大学に進学した目的についても、東大という肩書きではなく、CO₂から物質を合成する研究に取り組むことだったと説明しています。
大学4年生で研究室に配属され、実験設備を使った研究に取り組んだことで、東大で学びたいことは達成できたと判断したことも、退学を決めた理由の一つでした。
東大中退でも学士号は取得している
ここで誤解されやすいのが、大学を退学したことと最終学歴の関係です。
ホリプロの公式プロフィールによると、村木氏は2023年に東京大学工学部化学生命工学科を満期退学した後、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構から学士(工学)を取得しています。
つまり、東京大学を卒業したわけではありませんが、大学改革支援・学位授与機構を通じて工学の学士号を取得したということです。
退学と学位取得は別の制度に基づくため、「東大中退だから大学卒業資格が一切ない」という理解は正確ではありません。
村木風海の経歴・転換点まとめ
| 時期 | 出来事・所属 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 2010年 | 化学者として活動開始 | 小学4年生で化学研究に取り組む |
| 2017年 | 総務省の異能vationに本採択 | CRRA創設、17歳で機構長に就任 |
| 2017年12月 | ひやっしー初号機完成 | 小型CO₂回収装置の開発 |
| 2018年 | 北杜市で実証実験 | 学校17校、市役所2か所に設置 |
| 2019年 | 東京大学に推薦入学 | 理科一類に所属 |
| 2021年 | 工学部化学生命工学科に進学 | 専門分野の研究に取り組む |
| 2023年3月 | 東京大学を満期退学 | CRRAの研究開発に専念 |
| 2023年以降 | 学士(工学)を取得 | 大学改革支援・学位授与機構による学位取得 |
| 2024年 | 研究成果をめぐる発言が報道 | 東大側の調査対応が報じられる |
| 2026年4月 | CRRA新役員体制発足 | 村木氏が創業者兼CEO、笹原氏が社長兼COO |
なお、ホリプロの公式プロフィールには、東京医学技術専門学校の臨床検査技師科II部に在籍し、休学中との記載もあります。現在の学習状況については、同プロフィールに掲載されている情報が基準となります。
【ひやっしーの仕組み】CO₂を回収するDAC技術とは?
村木氏の代表的な発明として知られる「ひやっしー」は、大気中の二酸化炭素を直接回収する装置です。
この技術はDAC(Direct Air Capture)、日本語では直接空気回収と呼ばれます。
DACとは何か?一般的なCO₂回収との違い
CO₂回収には、発電所や工場の排ガスから二酸化炭素を分離する方法と、大気中にすでに拡散した二酸化炭素を直接回収する方法があります。
前者は比較的CO₂濃度の高い排ガスを対象にします。一方、DACは大気中にごく薄く存在するCO₂を対象にする技術です。
そのため、DACでは大量の空気を処理する必要があり、回収に必要なエネルギーや吸収剤の費用が大きな課題になります。
国際エネルギー機関(IEA)も、DACをネットゼロ実現に向けた技術の一つとして位置づけています。ただし、DACによる大気中CO₂の除去を成立させるには、回収したCO₂を永久的に貯留するか、製品のライフサイクル全体で排出削減効果を成立させる必要があります。
ひやっしーの内部構造と回収の流れ
CRRAが公開している内部構造の説明によると、ひやっしーは主に次の部品で構成されています。
- 空気吸入口
- CO₂濃度センサー
- エアーポンプ
- 水タンク
- CO₂吸収カートリッジ
- バッテリー
- 制御システム
- 空気吹出口
特徴は、アルカリ性の液体を使った化学吸収方式です。
装置に取り込まれた空気は、CO₂吸収カートリッジを通過します。内部の吸収液が二酸化炭素を取り込み、窒素や酸素などの気体は基本的にそのまま通過します。
CO₂濃度センサーは吸入口と吹出口の両方に設置され、濃度差と空気流量から回収量を計算します。
回収データはHiyassy WEBという独自のプラットフォームに送信され、利用者はスマートフォンやパソコンから回収量や稼働状況を確認できる仕組みです。
カートリッジは交換式で、CRRAの説明では使用環境によっておおむね1〜2か月に1回程度の交換が必要です。使用済みカートリッジはCRRAへ返送する方式になっています。
特許取得は環境性能の証明なのか?
CRRAは、ひやっしーについて特許第7004881号の特許査定を受けたと公表しています。
ただし、特許取得と環境性能の実証は別の話です。
特許は、発明の技術的な新規性や進歩性などを審査する制度です。装置が実際にどれだけCO₂を削減できるか、製造から廃棄まで含めて環境にプラスになるかを保証するものではありません。
したがって、特許取得をもって地球温暖化対策としての有効性まで証明されたと考えるのは適切ではありません。
【性能・回収量】ひやっしーのCO₂回収率84%は本当にすごい?
ひやっしーの性能を評価するうえで、特に注目されるのがCO₂回収率です。
CRRAの公式性能説明では、空気中のCO₂濃度に応じて約60〜84%の回収率が示されています。
CRRAが公表している性能試験の数値
公式サイトに掲載されている化学分析の結果は次のとおりです。
- 460ppm:吸入空気の平均CO₂濃度460ppmに対し、排出空気は平均200ppm。回収率は約60%。
- 1,300ppm:排出空気のCO₂濃度は約250ppm。回収率は約81%。
- 4,800ppm:排出空気のCO₂濃度は約760ppm。回収率は約84%。
測定にはガスクロマトグラフが使用されています。460ppmの試験では24時間の経時変化を測定し、1,300ppmと4,800ppmでは調製したガスを用いて複数回の測定を行ったと説明されています。
この結果から、少なくともCRRAが公表する試験条件では、装置を通過する空気のCO₂濃度を下げる性能が確認されています。
年間でどのくらいのCO₂を回収できる?
ここで注目したいのが、回収率と年間回収量の違いです。
回収率84%という数字は、取り込んだ空気に含まれるCO₂のうち、どの程度を吸収できるかを示すものです。装置が1年間に何kgのCO₂を回収するかとは別の指標になります。
CRRAの公式FAQでは、使用環境のCO₂濃度と稼働時間によって年間回収量が変化すると説明されています。
公表されている試算は以下のとおりです。
- 400ppm:平日8時間で年間約1kg、24時間365日で年間約4.1kg。
- 1,000ppm:平日8時間で年間約3.1kg、24時間365日で年間約12.5kg。
- 3,000ppm:平日8時間で年間約9.7kg、24時間365日で年間約40.7kg。
つまり、一般的な空気環境に近い400ppmでは、24時間365日稼働させても年間回収量は約4.1kgという試算です。
この数値を見ると、ひやっしーは大型の工場用DAC設備と同じ規模のCO₂削減を担う装置ではなく、家庭やオフィスに置く小型の回収装置であることが分かります。
性能を評価するときに見るべき3つの数字
ひやっしーを科学的に評価する場合、次の3つを混同しないことが大切です。
第一に、回収率。装置に取り込んだ空気から、どれだけCO₂を吸収できるかを示します。
第二に、絶対的な回収量。年間に何kgのCO₂を回収できるかという実際の量です。これは空気中の濃度や稼働時間によって変わります。
第三に、正味のCO₂削減量。回収量から、電力、吸収剤の製造、輸送、装置製造、交換・廃棄などに伴う排出量を差し引いた数字です。
この第三の指標がプラスにならなければ、回収装置を動かすこと自体が温暖化対策として逆効果になる可能性があります。
【専門家の批判と環境負荷】ひやっしーは逆にCO₂を増やす?
ひやっしーをめぐる議論で、最も重要なのがライフサイクル全体の環境負荷です。
装置の中でCO₂を吸収できたとしても、その装置を製造し、動かし、吸収剤を準備する過程で、回収量以上のCO₂を排出していれば、気候変動対策としての効果は成立しません。
山下誠・名古屋大学教授が指摘した問題
2023年12月22日、朝日新聞はひやっしーのサブスクリプションサービスをめぐる賛否を報道しました。
記事では、化学を専門とする山下誠・名古屋大学教授が、アルカリ水溶液によるCO₂回収について疑問を呈しています。
「アルカリ水溶液を作るのに出てしまうCO2より少ないCO2しか吸収できない」
この指摘の核心は、CO₂を吸収する化学反応だけを見ても、環境性能は評価できないという点です。
アルカリ性の吸収液を製造する際にはエネルギーが必要になります。原料の製造、輸送、カートリッジの加工などにも環境負荷が発生します。
その排出量が吸収量を上回るなら、装置がCO₂を回収していても、社会全体では温室効果ガスを増やす結果になりかねません。
村木氏側も電力による排出リスクを説明している
重要なのは、電力消費の問題についてCRRA自身も説明していることです。
ひやっしー4の公式説明では、消費電力は38Wとされています。CRRAの試算によると、東京電力の火力発電所由来の電力で年間稼働させた場合、約146kgのCO₂排出につながる可能性があります。
同社は、この排出量が年間回収量を上回る可能性を指摘し、太陽光エネルギーによる充電を強く推奨しています。
これは非常に重要な情報です。ひやっしーは、電源の選択によって環境性能が大きく変わる装置なのです。
ただし、146kgという数字はCRRAが示した特定の電力供給条件に基づく試算であり、すべての電源構成や利用環境にそのまま適用できる数字ではありません。
装置の製造・吸収剤・廃棄にも課題がある
2023年の朝日新聞の報道では、村木氏は装置全体の製造からリサイクルまでを含めたCO₂排出量について、部品点数が多く計算が終わっていないと説明していました。
同じ報道で、大阪大学の菊池誠教授は、技術の提案自体と、商品として事業化することは分けて考えるべきだとの見解を示し、当時の段階では商業化を急ぐことに疑問を呈しました。
これは単にひやっしーを否定する議論ではありません。新しい環境技術を社会に普及させる場合、技術的に動作することと、環境的・経済的に成立することの両方を証明する必要があるという指摘です。
回収したCO₂は永久に大気から取り除かれるのか?
もう一つの論点が、回収したCO₂の行き先です。
CRRAは、使用済みカートリッジを返送してもらい、回収したCO₂を石油代替燃料「そらりん」などの研究に利用する構想を説明しています。
しかし、CO₂を燃料に変換して利用することと、大気からCO₂を永久に取り除くことは同じではありません。
例えば、回収したCO₂から合成燃料を製造し、その燃料を航空機や自動車で燃焼させた場合、炭素は再びCO₂として大気に戻ります。
この場合、化石燃料を代替できることによる排出削減効果は期待できますが、CO₂を永久に貯留するタイプの炭素除去とは区別されます。
IEAも、DACによる炭素除去と、回収CO₂を合成燃料などの原料として利用することを区別しています。燃料利用の場合、原料調達から製造、使用までを含む排出収支が評価の鍵になります。
したがって、ひやっしーの実力を判断するには、装置出口のCO₂濃度だけでなく、吸収剤の製造、電力、回収後の処理、最終的なCO₂の行き先まで確認する必要があります。
【評判と2026年の研究課題】ひやっしーとCRRAの今後は?
ひやっしーの評判は、評価するポイントによって大きく異なります。
肯定的な見方では、家庭やオフィスに置ける小型の装置として、一般の人がCO₂回収という技術に触れるきっかけを作った点が挙げられます。
一方、批判的な見方では、装置の購入や稼働によって本当に温室効果ガスを減らせるのか、回収したCO₂をどう処理するのかという点が問題になります。
ひやっしーに対する評価が分かれる理由
2023年の朝日新聞の報道では、SNS上で発明を称賛する反応がある一方、環境への実質的な貢献に疑問を示す反応も紹介されました。
この対立は、装置の評価基準が異なることから生じています。
ひやっしーをCO₂回収の仕組みを身近に学べる装置として見るなら、CO₂濃度を可視化し、吸収する様子を理解できる点に意味があります。
しかし、家庭用のカーボンオフセット装置や、導入するだけで地球温暖化を防げる設備として評価するなら、正味のCO₂削減量や費用対効果を検証する必要があります。
つまり、技術への興味を喚起する価値と、環境負荷を実際に減らす価値は、分けて考えるべきです。
2025年から進められている新吸収剤の研究
CRRAの事業計画では、2025年7月時点で、従来の無機塩基系水溶液に加えて、新たな粉末状CO₂吸収剤であるアミン修飾多孔質シリカの実装に向けた検証を進めていると説明しています。
吸収剤の性能や製造コスト、再利用性が改善されれば、小型DACの事業性を高める可能性があります。
また、事業用DAC装置「ひやっしーパパ」の展開構想も発表されています。
CRRAの事業計画では、同装置について年間約30トンのCO₂回収能力を掲げています。これは会社側が示す計画上の性能値であり、すでに第三者によって確認された年間稼働実績とは区別して見る必要があります。
2026年のCRRAが目指す社会実装
2026年6月の第4回公募出資に関する発表では、CRRAはCO₂回収装置の開発、吸収剤の事業化に加え、閉鎖環境での農業分野におけるCO₂利活用を検証する方針を示しました。
これは、CO₂を回収して保管するだけでなく、産業や農業で利用できる資源として循環させる事業モデルを目指すものです。
植物の栽培環境など、CO₂を利用する需要先があれば、回収装置と利用先を結び付けることができます。ただし、利用されたCO₂がその後どのように移動し、最終的に排出されるかも含めた評価が必要です。
2026年のCRRAは、個人向け装置の普及だけでなく、産業用DAC、吸収剤販売、CO₂利活用を組み合わせる段階に進もうとしています。
東大教授との研究成果をめぐる発言はどうなった?
もう一つ、村木氏の名前とともに報じられたのが、東京大学在学中の研究成果をめぐる発言です。
2024年4月、テレビ番組で村木氏が、大学在学中に教授5人ほどから研究成果を持っていかれそうになったと発言したことをITmedia NEWSが報じました。
同社の取材に対して、東京大学工学部は事実関係を調査中と回答したとされています。
この報道は、村木氏本人の発言と大学側の当時の対応を伝えたものです。研究成果の不正取得があったと確定したことを意味するものではありません。
また、ひやっしーの環境性能をめぐる専門家の批判とは別の論点です。技術の評価と大学での研究をめぐる問題を混同しないことが重要です。
【プロの結論】村木風海とひやっしーを評価する判断基準
村木風海氏の挑戦を評価するうえでは、若い年齢で研究組織を創設し、CO₂回収技術を製品として形にしてきた行動力は注目に値します。
一方、環境技術は発明したことや、装置が動くことだけで評価できません。社会に普及させるなら、実際にどれだけ温室効果ガスを減らせるのかを数字で示す必要があります。
ひやっしーを評価する際には、次の4点が判断基準になります。
- 回収性能:実際の室内環境で、年間何kgのCO₂を回収できるか。
- エネルギー収支:稼働電力を含めても正味のCO₂削減が成立するか。
- 吸収剤の環境負荷:製造、交換、輸送、再利用まで含めて排出量を抑えられるか。
- 回収後の処理:CO₂を永久貯留するのか、燃料や製品に再利用するのか。
環境教育やCO₂回収技術を身近に感じるための装置として関心を持つ人と、確実なカーボンオフセットを目的に導入する人とでは、判断基準が異なります。
前者にとっては興味深い技術でも、後者にとっては第三者によるライフサイクル評価や正味削減量の確認が欠かせません。
村木氏とCRRAに求められる次の成果は、回収率の高さを示すことだけではなく、製造から回収後の処理までを含めた環境性能を客観的なデータで証明することです。
【村木風海の現在】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:村木風海は2026年現在、どんな役職に就いている?
A1:炭素回収技術研究機構株式会社(CRRA)の代表取締役機構長・創業者兼CEOです。2026年4月から笹原隆史氏が代表取締役社長兼COOを務めています。
Q2:村木風海は東京大学を卒業している?
A2:東京大学は2023年3月に満期退学しています。ただし、その後、大学改革支援・学位授与機構から学士(工学)を取得しています。
Q3:ひやっしーのCO₂回収率は何%?
A3:CRRAの公表試験では、吸入空気の濃度に応じて約60〜84%です。ただし、これは装置を通過する空気の回収率であり、製造や電力消費を含めた正味のCO₂削減率ではありません。
Q4:ひやっしーは地球温暖化を防ぐ効果がある?
A4:CO₂を吸収する性能はCRRAの試験結果で示されています。しかし、電力や吸収剤の製造などに伴う排出量を差し引いた正味の削減効果については、別途検証が必要です。
Q5:村木風海が創設したCRRAは2026年も活動している?
A5:活動しています。2026年4月の新役員体制発足、6月の第4回公募出資、7月の採用情報更新などが公式に発表されています。
まとめ:村木風海の現在とひやっしーの本当の評価
村木風海氏は、2017年に17歳でCRRAを創設し、東京大学への推薦入学と満期退学を経て、CO₂回収技術の研究開発を続けてきた発明家です。
2026年4月にはCRRAの新役員体制が発足し、村木氏は代表取締役機構長・創業者兼CEOとして研究開発を主導する立場になりました。笹原隆史氏が代表取締役社長兼COOとして経営と事業運営を担います。
ひやっしーについては、最大84%という回収率や年間回収量の試算が公表されています。しかし、回収率と正味のCO₂削減量は別の数字です。電力消費、吸収剤の製造、装置の製造・輸送、回収したCO₂の処理方法まで考慮しなければ、本当の環境性能は判断できません。
今後の注目点は、新しい吸収剤の実用化、事業用DAC装置の実績、そしてライフサイクル全体での環境負荷の検証です。
村木風海氏の挑戦が、話題性のある発明にとどまらず、社会全体のCO₂削減につながる技術として確立されるか。その答えは、今後公表される研究データと実際の事業成果にかかっています。
主な根拠資料: CRRA公式発表・機構概要・製品性能資料、ホリプロ公式プロフィール、ENCOUNTの2023年インタビュー、朝日新聞の2023年12月報道、ITmedia NEWSの2024年報道、国際エネルギー機関(IEA)のDAC解説資料。