無気肺(むきはい)とは、肺の一部または全体に十分な空気が入らなくなり、肺組織が縮んでしまった状態です。痰が気管支に詰まることや、腫瘍による気道の閉塞、全身麻酔を伴う手術、長期間の安静などが主な原因として挙げられます。無気肺は自覚症状がほとんどない場合もありますが、広範囲に及ぶと息切れや低酸素血症を引き起こし、肺炎などの合併症につながることもあります。
診断には胸部X線(レントゲン)やCT検査が用いられ、必要に応じて気管支鏡で気道内部を確認します。治療は原因や進行度によって異なり、排痰や呼吸訓練で改善するケースから、気管支鏡による閉塞物の除去や原因疾患への治療が必要なケースまでさまざまです。2026年時点の医学情報を踏まえ、無気肺の仕組み、原因、症状、検査、治療、術後の予防、回復期間、看護のポイントまで整理します。
【基礎知識】無気肺とは?肺が縮む仕組みと発症する理由

無気肺は、医学的には肺組織の虚脱によって肺の含気量と容量が減少した状態を指します。英語では「Atelectasis」と呼ばれます。
健康な肺では、気管から気管支へと運ばれた空気が、肺の末端にある小さな袋状の組織「肺胞」に届きます。肺胞では酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換が行われています。
ところが、何らかの理由で肺胞に空気が届かなくなったり、外側から肺が圧迫されたりすると、肺胞が十分に膨らめなくなります。その結果、肺の一部が縮んだ状態になるのです。
無気肺と肺胞の関係
肺胞が膨らんだ状態を維持するためには、呼吸による空気の出入りに加え、肺胞の内側を覆うサーファクタントという物質が重要です。サーファクタントには肺胞の表面張力を低下させ、つぶれにくくする働きがあります。
しかし、浅い呼吸が続いたり、気道が閉塞して空気の供給が途絶えたりすると、肺胞の内部にある空気が吸収され、肺胞が縮むことがあります。
無気肺は肺全体に起こるとは限りません。肺葉の一部、肺の下側、あるいは小さな領域だけに発生することもあります。
無気肺は必ずしも自覚症状があるわけではない
無気肺という言葉から、肺全体が完全につぶれて呼吸できなくなる状態を想像する人もいます。しかし、実際には小範囲の無気肺が画像検査で偶然見つかるケースもあります。
肺の一部分だけが縮んでいる場合、残りの正常な肺がガス交換を補うため、本人が異常を感じないこともあります。一方、広範囲に及ぶ場合には酸素を取り込む能力が低下し、呼吸困難や低酸素血症につながります。
【原因を解説】閉塞性無気肺・非閉塞性無気肺と術後に起こる理由
無気肺の原因を理解するうえで重要なのが、「閉塞性無気肺」と「非閉塞性無気肺」という分類です。
両者は肺が縮むという結果こそ共通していますが、空気が肺胞に届かなくなる仕組みが異なります。原因によって必要な検査や治療も変わるため、区別して理解することが大切です。
1.閉塞性無気肺:痰や腫瘍で気道が塞がれる
閉塞性無気肺は、気管支などの空気の通り道が塞がれることで発生します。
代表的な原因は、気道内部に詰まった粘液や痰です。痰が粘り気を増して気管支内に蓄積すると、空気が肺胞まで届きにくくなります。特に、咳をする力が弱い人や、術後で十分に痰を出せない人では注意が必要です。
ほかにも、次のような要因があります。
- 粘液栓:粘り気の強い痰が気管支を塞ぐ状態。
- 肺がんなどの腫瘍:腫瘍が気管支の内腔を狭めたり塞いだりする。
- 異物:食べ物などが気道に入り、空気の通り道を塞ぐ。
- リンパ節の腫大:気管支の外側から圧迫する場合がある。
特に成人で原因不明の無気肺が見つかった場合、気道内の腫瘍などが隠れていないかを確認が必要です。無気肺そのものが肺がんを意味するわけではありませんが、閉塞の原因を調べる必要があります。
2.非閉塞性無気肺:気道が塞がっていなくても発生する
非閉塞性無気肺は、気管支の内側が物理的に塞がれていないにもかかわらず、肺胞が十分に膨らめなくなる状態です。
代表的な原因には、次のようなものがあります。
- 胸水:肺の外側に液体がたまり、肺を圧迫する。
- 浅い呼吸:十分な吸気が得られず、肺胞が縮みやすくなる。
- 長期臥床:長時間同じ姿勢で過ごすことで、肺の背側などに換気が不十分な領域ができる。
- 肺の瘢痕化:肺組織の線維化や収縮によって肺が広がりにくくなる。
- 炎症などによる肺実質の変化:肺胞の正常な拡張が妨げられる。
つまり、気道の閉塞が見つからなくても、肺の外側からの圧迫や呼吸状態の変化によって無気肺が生じる可能性があります。
3.術後に無気肺が起こりやすいのはなぜ?
手術後の無気肺は、臨床現場で特に注意される問題の一つです。
全身麻酔を受けると、呼吸の状態が変化し、肺胞が十分に膨らみにくくなることがあります。加えて、手術後は傷口の痛みから深呼吸や咳を避けてしまい、痰が気道に残りやすくなります。
術後に起こりやすい要因は以下のとおりです。
- 全身麻酔:呼吸運動や肺の換気状態に影響する。
- 術後の疼痛:傷口の痛みで深呼吸や咳が十分にできなくなる。
- 痰の貯留:咳を控えることで気道に分泌物がたまりやすくなる。
- 長時間の安静:寝たままの状態が続き、肺の換気が不十分になりやすい。
- 鎮静・鎮痛薬の影響:薬剤によって呼吸や咳の働きが抑制される場合がある。
特に胸部手術や上腹部手術では、術後の痛みが呼吸運動に影響することがあります。そのため、術後の痛みを適切に管理しながら、無理のない範囲で呼吸訓練や離床を進めることが大切です。
原因と病態の関係を一覧で比較
| 分類・病態 | 主な原因 | 肺が縮む仕組み | 主な対応 |
|---|---|---|---|
| 閉塞性無気肺 | 痰、粘液栓、腫瘍、異物 | 気道が塞がり、肺胞への空気の供給が途絶える | 排痰、閉塞物の除去、原因疾患の治療 |
| 非閉塞性無気肺 | 胸水、浅い呼吸、肺実質の変化 | 圧迫や肺胞の拡張不全によって肺が縮む | 原因への対応、呼吸管理、肺拡張の促進 |
| 術後無気肺 | 全身麻酔、疼痛、痰の貯留、安静 | 浅い呼吸や分泌物の停滞によって換気が低下する | 疼痛管理、深呼吸、排痰、早期離床 |
| 板状無気肺 | 横隔膜の動きの制限、腹部手術後など | 肺の一部に線状の虚脱が生じる | 原因の評価、呼吸状態の管理 |
この比較から分かるように、無気肺の治療は単純に肺を膨らませればよいわけではありません。気道の閉塞があるのか、肺が外側から圧迫されているのか、それとも呼吸運動が低下しているのかを見極める必要があります。
【症状と見分け方】無気肺になるとどんな症状が出る?肺炎との違いも解説
無気肺の症状は、発生した範囲や進行速度、原因となった病気によって異なります。
小範囲の無気肺では自覚症状がないことも珍しくありません。一方、肺の広い範囲が縮むと、酸素を十分に取り込めなくなり、呼吸に関する症状が現れる可能性があります。
無気肺で見られる主な症状
- 息切れ・呼吸困難:肺の換気が低下し、呼吸が苦しく感じられる。
- 咳:気道の刺激や痰の貯留によって咳が出る。
- 痰が絡む:気道内に分泌物が蓄積し、排出しにくくなる。
- 胸の痛み:原因となった疾患や胸膜への刺激などによって生じる場合がある。
- 低酸素血症:血液中の酸素が不足する状態。
- 呼吸数の増加:酸素不足を補うため、呼吸が速くなることがある。
なお、発熱がある場合は、無気肺そのものだけでなく、肺炎などの感染症が合併していないかを調べる必要があります。
無気肺と肺炎は何が違う?
無気肺と肺炎は、胸部X線で似たような白い陰影として映ることがあります。しかし、両者は病気の仕組みが異なります。
無気肺は肺の空気が減少し、肺組織が縮んだ状態です。一方、肺炎は細菌やウイルスなどの病原体によって肺に炎症が起こる感染症です。
両者は別の病態ですが、無気肺が続くと肺炎を合併する可能性があります。また、肺炎による炎症が無気肺の発生に関係することもあります。
画像検査では、無気肺の場合、肺容量の減少や葉間裂・気管支などの位置の変化が手掛かりになります。ただし、画像だけで自己判断することはできません。
発熱、咳、痰、呼吸困難などの症状や血液検査の結果も含め、医師が総合的に判断します。
気胸との違いにも注意
無気肺と混同されやすい言葉に「気胸」があります。
無気肺は肺組織の中の空気が減少して肺が縮む状態ですが、気胸は肺の外側にある胸膜腔に空気が入り、肺が圧迫されて縮む状態です。
気胸では突然の胸痛や呼吸困難が起こることがあり、重症の場合は緊急処置が必要です。急な胸痛や息苦しさを感じた場合は、無気肺と決めつけず、速やかに医療機関で評価を受けてください。
【検査方法】無気肺はレントゲン・CT・気管支鏡でどう診断する?
無気肺の診断では、まず肺が縮んでいるかどうかを確認し、次にその原因を調べることが重要です。
日本の臨床情報をまとめた「今日の臨床サポート」では、胸部X線で無気肺が疑われた場合、胸部CTによる鑑別を進め、必要に応じて喀痰培養、喀痰細胞診、気管支鏡などを検討すると説明されています。
1.胸部X線(レントゲン)
胸部X線は、無気肺を発見するための基本的な画像検査です。
肺に空気が十分に入っている部分はX線画像で比較的黒く映りますが、空気が減少した部分は白っぽい陰影として確認されます。
無気肺では、次のような所見が見られることがあります。
- 肺野の一部が白く見える。
- 肺の容積が小さくなっている。
- 葉間裂などの位置が変化している。
- 気管や肺門などの構造が患側へ移動している。
ただし、小さな無気肺や初期の病変は、胸部X線だけでは判断が難しい場合があります。
2.胸部CT検査
CT検査は、肺を断面画像として詳しく確認できる検査です。
胸部X線では分かりにくい小さな無気肺や、肺の内部にある腫瘍、気管支の閉塞、胸水などを評価する際に役立ちます。
特に、原因がはっきりしない無気肺では、CTによって次のような点を確認します。
- 無気肺が発生している場所と範囲。
- 気管支が狭くなっていないか。
- 痰や粘液栓が詰まっていないか。
- 腫瘍などによる気道閉塞がないか。
- 胸水など肺を圧迫する要因がないか。
必要に応じて造影剤を使用することもありますが、造影の有無は疑われる原因や患者の状態によって決まります。
3.気管支鏡検査
気管支鏡検査は、細い内視鏡を口または鼻から挿入し、気管や気管支の内部を直接観察する検査です。
日本呼吸器内視鏡学会による一般向け解説では、気管支鏡は気管支の観察だけでなく、組織や細胞、分泌物などの採取にも使用されると説明されています。
無気肺では、次のような目的で実施されることがあります。
- 気管支内に痰や粘液栓が詰まっていないか確認する。
- 腫瘍などによる気道閉塞の有無を調べる。
- 必要に応じて組織や細胞を採取する。
- 詰まった分泌物などを取り除く。
すべての無気肺に気管支鏡が必要なわけではありません。胸部X線やCTで原因が分からない場合、あるいは気道閉塞が疑われる場合などに、医師が必要性を判断します。
検査前には喉の局所麻酔などを行い、必要に応じて鎮静剤を使用します。検査後も麻酔の影響が残るため、一定時間の飲食制限などが設けられます。
検査を受ける際に確認したいポイント
医師から無気肺を指摘された場合は、単に「肺が縮んでいる」という説明だけで終わらせず、次の点を確認すると病状を理解しやすくなります。
- 無気肺は右肺・左肺のどちらにあるのか。
- 肺のどの部分に発生しているのか。
- 範囲は小さいのか、広範囲なのか。
- 気道閉塞や腫瘍が疑われているのか。
- 肺炎や胸水などの合併症はないか。
- 追加のCT検査や気管支鏡が必要なのか。
特に、手術を受けていない人に原因不明の無気肺が見つかった場合は、気管支の閉塞や肺の病気が隠れていないかを確認が必要です。
【治療と回復期間】無気肺は治る?痰の除去から気管支鏡まで
無気肺の治療は、発生した原因、肺が縮んでいる範囲、呼吸状態によって異なります。
軽度で原因が一時的なものであれば、呼吸状態を観察しながら自然に改善するケースもあります。一方、痰や腫瘍などによって気道が塞がれている場合は、その原因を取り除く治療が必要です。
1.痰を出しやすくする排痰ケア
痰が気管支に詰まっている場合は、気道にたまった分泌物を排出することが治療の基本になります。
代表的な方法には、以下のものがあります。
- 咳を利用して痰を排出する。
- ハフィングなどの呼吸・排痰法を取り入れる。
- 必要に応じて胸部理学療法を実施する。
- 医師の判断で吸入薬などを使用する。
- 体位を調整し、痰を排出しやすくする。
ただし、痰があるからといって自己判断で強く胸を叩いたり、無理に排痰したりするのは避けてください。適切な方法は、年齢や呼吸状態、基礎疾患などによって異なります。
2.深呼吸と肺拡張訓練
浅い呼吸が続くことで肺胞が十分に膨らんでいない場合は、深呼吸などによって肺の換気を改善する方法が検討されます。
医療機関では、インセンティブスパイロメーターと呼ばれる呼吸訓練器具が使用される場合があります。
これは、患者がゆっくり息を吸い込むことで肺の拡張を促すための器具です。特に術後の呼吸訓練で使用されることがあります。
3.気管支鏡による閉塞物の除去
痰や粘液栓、異物などが気道を塞いでいる場合、気管支鏡を使って閉塞物を取り除く治療が検討されます。
腫瘍が原因である場合は、腫瘍の性質や位置、患者の全身状態に応じて、腫瘍に対する治療や気道を確保するための処置を検討します。
気管支鏡は検査と治療の両方に使える点が特徴です。
4.胸水や基礎疾患への治療
肺の外側に胸水がたまって肺を圧迫している場合は、胸水の原因を調べ、必要に応じて排液などを行います。
また、肺炎、肺がん、慢性肺疾患などが関係している場合は、それぞれの病気に対する治療が必要です。
無気肺だけに注目するのではなく、肺が縮む原因となった病態を改善することが、再発防止にもつながります。
無気肺の回復期間はどれくらい?
無気肺の回復期間に一律の基準はありません。
原因が取り除かれ、肺が再び十分に膨らめるようになれば改善が期待できますが、回復に必要な時間は無気肺の範囲や閉塞の程度、基礎疾患によって変わります。
軽度の術後無気肺では、呼吸訓練や離床などによって24〜48時間程度で改善するケースもあります。一方、腫瘍による気道閉塞や慢性的な肺疾患が関係する場合は、原因への治療を含めて、より長い期間の管理が必要になることがあります。
また、画像上の陰影が消える時期と、本人が息苦しさを感じなくなる時期は必ずしも一致しません。
治療後も胸部X線やCTなどで経過を確認し、肺の膨らみや原因疾患の改善状況を評価することが大切です。
【予防と看護】術後無気肺を防ぐためにできること
無気肺は、発症後の治療だけでなく、発生する前の予防も重要です。特に手術後や長期間ベッドで過ごす患者では、呼吸状態を継続的に確認する必要があります。
術後無気肺を防ぐ5つのポイント
1.早期離床を進める
手術後、医師の許可が得られたら、できる範囲で身体を起こし、座位や歩行へ移行します。身体を動かすことで深い呼吸が促され、肺の換気を維持しやすくなります。
2.深呼吸を習慣化する
術後は痛みや疲労によって呼吸が浅くなりやすいため、医療スタッフの指示に従って深呼吸を行います。呼吸訓練器具を使用する場合は、正しい方法を確認しましょう。
3.適切に痰を排出する
痰が気道に残ると、気管支の閉塞につながる可能性があります。咳や排痰が難しい場合は、看護師や医師に相談し、必要な援助を受けることが大切です。
4.術後の痛みを我慢しない
傷口の痛みを我慢していると、深呼吸や咳が十分にできなくなる場合があります。痛みが強い場合は医療スタッフに伝え、適切な鎮痛方法を相談してください。
5.禁煙と基礎疾患の管理を行う
喫煙は呼吸器の状態に悪影響を及ぼすため、禁煙が推奨されます。また、COPDなどの慢性肺疾患がある場合は、手術前から治療状態を整えておくことが重要です。
無気肺の看護で重要な観察項目
看護の現場では、無気肺の発生を防ぐことと、早期に異常を発見することの両方が大切です。
特に術後患者や長期臥床患者では、次のような項目を継続的に観察します。
- 呼吸数:呼吸が速くなっていないか、浅くなっていないか。
- SpO2:経皮的酸素飽和度が低下していないか。
- 呼吸音:左右差や呼吸音の減弱がないか。
- 痰の状態:量、色、粘り気、排出のしやすさに変化がないか。
- 疼痛:深呼吸や咳を妨げる痛みがないか。
- 発熱:肺炎などの感染症を疑う変化がないか。
- 活動状況:離床や歩行が進んでいるか。
看護ケアで取り入れられる主な援助
看護では、患者の状態に合わせた体位変換、離床介助、深呼吸の促進、排痰援助などを行います。
また、痛みによって呼吸が制限されている場合は、痛みの程度を確認し、医師と連携して鎮痛を調整することも大切です。
酸素療法が必要な場合には、医師の指示に従って酸素投与を行い、呼吸状態や酸素飽和度を確認します。
ただし、すべての患者に同じ看護計画が適用されるわけではありません。術式、年齢、基礎疾患、意識状態、呼吸機能などを踏まえた個別の対応が必要です。
板状無気肺とは?術後のレントゲンで見つかることも
無気肺の一種に「板状無気肺」があります。英語では「Discoid atelectasis」と呼ばれ、胸部X線で細長い線状の陰影として見えるのが特徴です。
日本救急医学会の医学用語解説では、板状無気肺は中・下肺野に見られる特殊な形態として説明されており、約2〜3cmの長さ、1〜3mm程度の厚さの線状陰影が特徴とされています。
板状無気肺は、横隔膜の動きが制限される腹部疾患や腹部手術後などに生じることがあります。膵炎、胆のう炎、横隔膜下膿瘍なども関連する原因として挙げられています。
レントゲンに線状の陰影があるからといって、必ずしも重篤な病気を意味するわけではありません。しかし、陰影の原因や他の異常の有無を確認するため、医師による画像評価が必要です。
【受診の判断】無気肺を疑ったときに確認したい症状と注意点
無気肺は、画像検査で偶然発見されることもある一方、急激に呼吸状態が悪化するケースもあります。
特に、手術後や長期間寝たきりの状態にある人、痰を十分に出せない人、呼吸器疾患を持つ人では、呼吸状態の変化に注意してください。
早めに医療機関へ相談したい症状
- 以前より息切れしやすくなった。
- 咳や痰が長く続いている。
- 痰に血液が混じっている。
- 手術後から呼吸が浅くなっている。
- 発熱や咳が続き、呼吸状態が悪化している。
- 健康診断やレントゲンで肺の異常陰影を指摘された。
特に、血痰や原因不明の咳が続く場合は、気管支や肺の病気が隠れていないか調べる必要があります。
すぐに救急対応が必要な症状
突然の強い呼吸困難、唇や顔色が青白くなるチアノーゼ、意識がもうろうとする状態、急激な胸痛などがある場合は、無気肺と自己判断せず、直ちに救急対応を求めてください。緊急性が高い場合は119番への通報が必要です。
また、在宅でパルスオキシメーターを使用している場合、酸素飽和度が普段より大きく低下したときも注意が必要です。数値だけで判断せず、息苦しさや意識状態などを含めて対応してください。
【無気肺とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:無気肺は自然に治りますか?
A1:原因が一時的で、肺の縮み方が軽度であれば、自然に改善することがあります。ただし、痰や腫瘍などによる気道閉塞がある場合は、原因への治療が必要です。無症状でも、医師の指示に従って経過を確認してください。
Q2:無気肺は肺炎に進行することがありますか?
A2:あります。無気肺によって肺の一部の換気が低下すると、肺炎を合併する可能性があります。ただし、無気肺と肺炎は別の病態です。発熱、咳、痰、呼吸困難などがある場合は、感染症の有無も確認する必要があります。
Q3:術後の無気肺は何日くらいで回復しますか?
A3:軽度の術後無気肺では24〜48時間程度で改善するケースもあります。ただし、痰の詰まりや広範囲の虚脱、基礎疾患などがある場合は、さらに時間がかかることがあります。回復期間は個人差が大きいため、画像検査や呼吸状態を確認しながら判断します。
Q4:無気肺があると必ず息苦しくなりますか?
A4:必ずしもそうではありません。肺の一部分だけに発生した軽度の無気肺では、ほとんど症状がない場合もあります。一方、広範囲に及ぶ場合は酸素不足や呼吸困難につながることがあります。
Q5:無気肺の検査では必ず気管支鏡を受けるのでしょうか?
A5:必ず受けるわけではありません。胸部X線やCTで原因が分かる場合には、気管支鏡を行わずに治療や経過観察を進めることもあります。気道閉塞や腫瘍が疑われる場合などに、医師が必要性を判断します。
Q6:板状無気肺と通常の無気肺は違う病気ですか?
A6:別の病気というより、無気肺の形態の違いです。板状無気肺は胸部X線で細長い線状陰影として確認されるタイプで、腹部手術後や横隔膜の動きが制限される病態などに関連して発生することがあります。
まとめ:無気肺の早期発見と原因に応じた治療が回復への鍵
無気肺とは、肺の一部または全体の空気が減少し、肺組織が縮んだ状態です。原因には痰や腫瘍による気道閉塞、全身麻酔、術後の浅い呼吸、胸水、長期臥床などがあり、閉塞性無気肺と非閉塞性無気肺に大きく分類されます。
症状は無気肺の範囲や進行度によって異なり、軽度では無症状の場合もありますが、広範囲に及ぶと呼吸困難や低酸素血症を引き起こす可能性があります。
診断では胸部X線が基本となり、CT検査によって病変の範囲や原因を詳しく調べます。必要に応じて気管支鏡を使用し、気道の閉塞や腫瘍の有無を確認したり、分泌物を除去したりします。
治療では、排痰、深呼吸、肺拡張訓練、早期離床などが重要です。原因が痰や腫瘍などの閉塞にある場合は、その原因を取り除く治療も必要になります。
【プロの結論】
無気肺について最も大切なのは、レントゲンに写った陰影だけで重症度を判断しないことです。重要なのは、肺のどこがどの程度縮んでいるのか、なぜ空気が入らなくなったのか、そして酸素を取り込む能力にどの程度影響しているのかという3つの視点です。
特に術後の無気肺では、痛みの管理、十分な呼吸、痰の排出、早期離床が予防と回復を支えます。一方、手術歴がないのに原因不明の無気肺が見つかった場合は、気道閉塞や腫瘍などの原因を調べることが欠かせません。
無気肺は原因を適切に取り除くことで改善が期待できる状態です。息苦しさや血痰、発熱などの異常がある場合は早めに医療機関を受診し、検査結果や治療方針、再検査の必要性について医師に確認しましょう。
医学的根拠として参照した主な資料:
- 今日の臨床サポート「無気肺」(2025年3月26日レビュー)。
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「無気肺」。
- 日本救急医学会「医学用語解説集・無気肺」。
- 日本呼吸器内視鏡学会「気管支鏡による検査、治療について」。
- American Lung Association「Atelectasis」(回復期間・治療に関する解説)。