ユンノリは、韓国語で「윷놀이」と表記します。「ユッ(윷)」はゲームに使う木の棒、「ノリ(놀이)」は遊びを意味し、日本語に置き換えると「ユッを使った遊び」という意味になります。
ゲームの基本構造は、4本の棒を投げて出た結果に応じて駒を動かすことです。サイコロの代わりに木の棒を使う点が大きな特徴です。
ユンノリに必要な3つの道具
ゲームに必要な道具は、基本的に次の3種類です。
- ユッカラク(윷가락): 投げて目を決める4本の木の棒。
- ユッパン(윷판): 駒を進めるためのゲーム盤。伝統的な盤面は29の地点で構成される。
- マル(말): 盤面の上を移動する駒。基本的に1チーム4個を使用する。
ユッカラクは、平らな面と丸みのある面を持つ木製の棒です。栗の木などが材料として使われてきました。
ユッパンにはスタート地点からゴールまでの移動経路が描かれており、マルをどのように進めるかが勝敗を左右します。
韓国観光公社の伝統文化紹介でも、4本の棒、ゲーム盤、駒を使う遊びとして説明されています。
【ユッの目を完全解説】ト・ケ・コル・ユッ・モは何を意味する?

ユンノリを理解するうえで最初に覚えたいのが、5種類の出目である「ト・ケ・コル・ユッ・モ」です。
4本のユッカラクを同時に投げ、平らな面が上を向いた棒の本数によって進めるマス数が決まります。
5種類の出目と進めるマス数
| 出目 | ハングル | 進める数 | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| ト | 도 | 1マス | 平らな面が1本 |
| ケ | 개 | 2マス | 平らな面が2本 |
| コル | 걸 | 3マス | 平らな面が3本 |
| ユッ | 윷 | 4マス | 平らな面が4本。追加投げ可能 |
| モ | 모 | 5マス | 平らな面が0本。追加投げ可能 |
この5種類を覚えれば、ユンノリの基本的な進行方法が分かります。国立民俗博物館の子ども向け民俗辞典でも、各出目と移動距離、追加投げの仕組みが紹介されています。
出目には動物の意味もある?
ユンノリの出目には、家畜の名前との関連を説明する伝承もあります。
| 出目 | 対応するとされる動物 |
|---|---|
| ト(도) | 豚 |
| ケ(개) | 犬 |
| コル(걸) | 羊 |
| ユッ(윷) | 牛 |
| モ(모) | 馬 |
これは単なる数字の呼び名ではなく、伝統的な農耕・牧畜文化と結び付けて理解されてきたものです。
動物の大きさや移動の速さと、進める距離を関連付ける説明もあります。ただし、動物との対応だけでユンノリの起源が確定するわけではありません。
ユッとモが出ると有利な理由
ユンノリで盛り上がる場面の一つが、ユッまたはモが出たときです。
通常の出目では一度の投げで移動が終わりますが、ユッとモの場合は追加でもう一度投げられます。
例えば、最初にモが出て5マス進み、次にユッが出れば、さらに4マス進めます。
つまり、1回の順番で複数回の移動を重ねられるため、ゲームの展開が大きく変わる可能性があります。
運だけでなく、どの駒を動かすかという判断が重要になる理由もここにあります。
【初心者向け】ユンノリの遊び方と基本ルールを7ステップで解説
ユンノリは、ルールを覚えてしまえば初心者でも参加しやすいゲームです。
韓国文化に詳しくなくても、出目と駒の動かし方を理解すれば、家族や友人と一緒に楽しめます。
STEP1:2つのチームに分かれる
ユンノリは2人以上で遊べます。
人数が増えた場合は、参加者を2つのチームに分けます。各チームには基本的に4個のマルを用意します。
STEP2:先攻と後攻を決める
韓国文化体育観光部の伝統遊び紹介では、ユッカラクを2本ずつ使って順番を決める方法が紹介されています。
両チームが投げた結果を比較し、より高い結果を出したチームが先攻になります。
STEP3:4本のユッカラクを投げる
順番が来たら4本の棒をまとめて投げます。
平らな面が上を向いた本数を確認し、ト・ケ・コル・ユッ・モのいずれかを判定します。
STEP4:出目に応じてマルを動かす
出た目に従って、盤面上のマルを移動させます。
例えば、ケが出た場合は2マス、コルが出た場合は3マス進みます。
複数の駒が盤面にある場合は、どの駒を動かすかを選択できます。
STEP5:ユッやモが出たら追加で投げる
ユッまたはモが出た場合は、もう一度ユッカラクを投げます。
追加の出目を利用して、さらに駒を進められます。
STEP6:相手のマルを捕まえる
自分の駒を相手の駒がいる地点に進めると、相手の駒を捕まえられます。
捕まった駒はスタート地点に戻されます。
加えて、相手の駒を捕まえた側は追加でもう一度投げられます。
このルールによって、リードしていたチームが一気に不利になることもあります。
STEP7:すべてのマルをゴールさせる
自分のチームの4個の駒をすべて盤面の最終地点まで進めます。
最後の地点は「チャムモギ(참먹이)」と呼ばれます。
相手より先にすべての駒をゴールさせたチームが勝者です。
【ユンノリの勝ち方】駒の進め方と戦略・ローカルルールの違い
ユンノリはサイコロを使うゲームと同じく運の要素がありますが、勝敗を分けるのは出目だけではありません。
どの駒を動かすのか、相手を捕まえるのか、複数の駒をまとめて進めるのかという判断が重要です。
勝敗を左右する3つのポイント
1.駒をまとめて進める「アップギ」
自分の駒が同じ地点に集まった場合、複数の駒を一緒に進められます。
この方法は、残りの駒を効率よくゴールに近づけるために有効です。
一方、まとめた駒が相手に捕まると、複数の駒が一度にスタート地点へ戻される危険があります。
そのため、駒をまとめるか、それぞれ独立して動かすかの判断が重要です。
2.相手の駒を捕まえる
相手の駒がゴールに近づいている場合、捕まえることで相手の進行を妨害できます。
しかも捕獲後には追加投げができるため、攻撃と自分の駒の移動を同時に狙えます。
3.出目を見越して駒を選ぶ
ユッやモによる追加投げを利用できるため、盤面にある駒の位置を確認してから動かす駒を決めることが大切です。
目先の移動距離だけでなく、次のターンにどのような展開が考えられるかを意識すると、戦略性が高まります。
「ピェクト」とは?後ろに戻る特別ルール
ユンノリには、家庭や地域によって異なる追加ルールがあります。
その代表例が「ピェクト(빽도)」です。
通常のト・ケ・コル・ユッ・モに加えて、特定の印を付けた棒が決められた状態で出た場合、駒を1マス後ろに戻すというルールです。
ただし、ピェクトはすべてのユンノリで必ず採用されるわけではありません。
家庭や地域によって採用するかどうかが異なるため、初めて遊ぶ際には、ゲーム開始前に確認しておくと混乱を防げます。
初心者が遊ぶときに決めておきたいこと
- ピェクトを採用するかどうか
- 駒を何個使用するか
- 捕まえたときに追加投げを認めるか
- 駒をまとめて移動させるルールをどう扱うか
- ゴールの判定方法
基本ルールを統一しておけば、初めて参加する人もゲームに入りやすくなります。
【ユンノリの起源と歴史】古代から伝わる韓国の民俗文化
ユンノリの起源は、韓国の民俗文化を研究するうえでも興味深いテーマです。
現在のようなボードゲームとして親しまれるまでには、長い歴史があると考えられています。
起源は三国時代以前にさかのぼる?
韓国文化体育観光部の伝統遊び紹介では、ユンノリは百済時代にはすでに行われていたとみられ、高麗時代には遊ぶ様子を詩に詠んだ記録があると説明されています。
また、国立民俗博物館の『韓国民俗大百科事典』によれば、ユンノリの起源については複数の研究があり、確定した定説はありません。
有力な説の一つとして、古代の扶余(プヨ)の官職名との関係が挙げられています。
扶余の政治制度に由来するという説
扶余には、馬加・牛加・猪加・狗加などの名称を持つ支配集団が存在したとされています。
この名称と、ユンノリの出目にある動物との関連性を指摘する研究があります。
ただし、すべての出目の由来をこの説だけで説明できるわけではなく、歴史的な起源を確定する証拠として扱うことはできません。
高麗時代から朝鮮時代にかけての記録
ユンノリの歴史を考えるうえで重要なのが、古い文献に残された記録です。
韓国学中央研究院の『韓国民俗大百科事典』では、中国の歴史書『北史』や『太平御覧』に記された扶余の遊戯、高麗末期の文人・李穡(イ・セク)の『牧隠集』などが取り上げられています。
高麗時代には、現在のユンノリに通じる盤面と駒を使った遊びが詩の題材になっていました。
朝鮮時代にも関連する文献が残されており、ユンノリが長い期間にわたって人々に親しまれてきたことが分かります。
29地点のユッパンと天文学的な解釈
ユンノリの盤面は、基本的に29の地点から構成されています。
韓国文化体育観光部の解説では、北斗七星が北極星を中心に回る姿を盤面の由来とする説明が紹介されています。
また、2022年の文化財指定に関する政府の説明では、陰陽や二十八宿など、伝統的な宇宙観・天文観との関係にも言及されています。
こうした解釈からも、ユンノリは単に駒を動かす娯楽ではなく、昔の人々の自然観や世界観と結び付けて研究されてきた遊びであることがうかがえます。
【ソルナルとユンノリの関係】国家無形文化財に指定された理由と日本のすごろくとの違い
ユンノリを語るうえで欠かせないのが、韓国の旧正月「ソルナル」との関係です。
ソルナルは旧暦の1月1日に当たる韓国の伝統的な祝日です。家族が集まり、先祖を敬い、年長者に新年のあいさつをするなど、家族や親族のつながりを大切にする日として受け継がれています。
ソルナルにユンノリを遊ぶ理由
ソルナルには、トックク(餅入りスープ)を食べたり、セベ(新年の礼)を行ったりする習慣があります。
そのほか、家族や親戚が一緒に楽しむ伝統遊びとしてユンノリも親しまれています。
韓国観光公社の2025年の紹介記事でも、ユンノリは年齢を問わず家族全員で楽しめるソルナルの代表的な遊びとして取り上げられています。
また、ユンノリはソルナル当日だけに限定されません。
国立民俗博物館の資料によると、旧正月から旧暦1月15日の正月大보름(テボルム)まで遊ばれ、特にテボルムにも盛んに行われてきました。
2026年のソルナルは2月17日
2026年のソルナルは、2月17日でした。
韓国では2月16日から18日までの3日間が旧正月の連休となり、帰省や家族との集まり、伝統文化の体験などが行われました。
韓国観光公社の2026年版ソルナル旅行ガイドでも、ユンノリは旧正月を代表する伝統遊びとして紹介されています。
ユンノリは国家無形文化財なのか?
ユンノリは、韓国の国家無形文化財に指定された伝統文化です。
韓国の国家遺産ポータルによると、指定日は2022年11月11日です。現在の公式分類では「国家無形遺産(국가무형유산)」として掲載されています。
ここで押さえておきたいのが、指定の対象です。
ユンノリは、特定の個人や団体だけが継承する文化ではありません。韓国各地の家庭や地域社会で広く伝承されてきた遊びです。
そのため、特定の保有者や保有団体を認定する形式ではなく、共同体が共有する文化として評価されました。
2022年9月の文化財庁による指定予告では、長い歴史、歴史的記録の存在、学術研究上の価値、家族や地域共同体による継続的な伝承が評価理由として挙げられています。
なお、韓国では2024年5月17日に関連法制度が変更され、それまでの「国家無形文化財」という名称は「国家無形遺産」に移行しました。
したがって、2026年時点で正確に説明するなら、2022年に国家無形文化財として指定され、現在は国家無形遺産として扱われているという表現になります。
ユンノリと日本のすごろくは何が違う?
ユンノリは、日本のすごろくに似たゲームとして紹介されることがあります。
どちらも盤面上で駒を動かし、ゴールを目指す点では共通しています。
ただし、実際のゲーム構造には違いがあります。
| 比較項目 | 韓国のユンノリ | 日本の絵双六 |
|---|---|---|
| 出目を決める道具 | 4本の木の棒 | 主にサイコロ |
| 移動方法 | 1〜5マス | サイコロの数字に応じて移動 |
| ゲームの特徴 | 駒を捕まえる、まとめて進める | 盤面の指示や経路に沿って進む |
| 追加要素 | ユッ・モによる追加投げ | 種類によって異なる |
| 主な目的 | すべての駒をゴールさせる | 盤面のゴールを目指す |
特に大きな違いは、ユンノリでは相手の駒を捕まえる仕組みがあり、自分の駒をまとめて動かせることです。
日本の絵双六が、絵やマスの指示を楽しみながらゴールを目指す遊びとして発展してきたのに対し、ユンノリはチーム同士の駆け引きが勝敗に大きく関わります。
そのため、単に韓国版のすごろくと理解するよりも、独自のルールを持つ伝統的な対戦型ボードゲームとして捉えるほうが適切です。
【ユンノリとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ユンノリとはどのようなゲームですか?
A1:ユンノリは、韓国の伝統的なボードゲームです。4本の木の棒を投げて出目を決め、その結果に応じて盤面上の駒を進めます。相手の駒を捕まえることもでき、すべての駒を先にゴールさせたチームが勝ちます。
Q2:ユンノリの5種類の目は何ですか?
A2:ト(도)、ケ(개)、コル(걸)、ユッ(윷)、モ(모)の5種類です。それぞれ1・2・3・4・5マス進みます。ユッとモが出ると追加で投げられます。
Q3:ユンノリは何人で遊べますか?
A3:基本的には2人以上で遊べます。人数が多い場合は2チームに分かれ、チームごとに4個の駒を使うのが一般的です。
Q4:ユンノリは韓国の旧正月だけに遊ぶゲームですか?
A4:いいえ。ソルナルの時期に特に親しまれますが、旧正月から正月大보름(テボルム)まで遊ばれてきた伝統遊びです。現在は伝統文化体験や地域のイベントなどでも楽しまれています。
Q5:ユンノリは国家無形文化財に指定されていますか?
A5:はい。2022年11月11日に国家無形文化財に指定されました。2024年の制度変更後は、国家無形遺産という名称で扱われています。
Q6:ユンノリと日本のすごろくの違いは何ですか?
A6:大きな違いは、出目を決める道具と駒の動かし方です。ユンノリは4本の木の棒を使い、相手の駒を捕まえたり、自分の駒をまとめて進めたりできます。
Q7:ユンノリは子どもでも楽しめますか?
A7:楽しめます。基本ルールは比較的簡単で、年齢の異なる家族が一緒に遊べる点も特徴です。最初はピェクトなどの追加ルールを使わず、5種類の出目だけで遊ぶと理解しやすくなります。
まとめ:ユンノリは韓国の歴史と家族文化を伝える伝統ゲーム
ユンノリとは、4本の木の棒を投げ、その出目に応じて駒を進める韓国の伝統的なボードゲームです。
基本となるのは、ト・ケ・コル・ユッ・モの5種類の出目。ユッとモによる追加投げ、相手の駒を捕まえるルール、複数の駒をまとめて進める仕組みなど、シンプルな見た目以上の戦略性を備えています。
また、ユンノリは韓国の旧正月ソルナルと深く結び付いています。家族や親戚が集まる場で世代を超えて楽しまれ、2022年11月11日には国家無形文化財にも指定されました。
2026年現在の公式分類は国家無形遺産です。これは、特定の人物だけでなく、地域や家庭を通じて共有されてきた文化そのものが評価されたことを意味します。
ユンノリを理解する際に大切なのは、単に韓国版のすごろくとして見るのではなく、歴史・天文観・農耕文化・家族の交流が重なった伝統遊びとして捉えることです。
ルールを覚えて実際に遊んでみれば、韓国の旧正月に人々が集まり、ユッカラクを投げながら盛り上がってきた文化的な背景も、より身近に感じられるはずです。