2026年1月25日の名護市長選挙には、無所属の現職1人と新人2人の計3人が立候補しました。告示日は1月18日。任期満了に伴う選挙で、名護市の今後4年間の行政運営を担う市長を決める戦いとなりました。
名護市選挙管理委員会が公表した最終開票結果は次の通りです。
2026年1月25日 名護市長選挙・確定結果
渡具知武豊氏20,009票

得票率65.0%
翁長久美子氏10,543票
得票率34.3%
伊波勝也氏228票
得票率0.7%。有効投票数30,780票。名護市選挙管理委員会の確定開票資料に基づく。
最も注目されたのは、渡具知氏と翁長氏の9,466票差です。渡具知氏は全有効投票の65.0%を獲得し、3分の2に近い支持を集めました。
当日有権者数は50,889人、投票者数は30,916人。無効投票は136票で、有効投票は30,780票でした。選挙管理委員会の最終開票資料では、1月26日午前0時5分に開票率100%となっています。
今回の結果は、単に現職が勝利したというだけではありません。2期8年間の市政運営を継続する選択が、選挙という形で示されたことに意味があります。一方、翁長氏を支持した有権者が求めた基地政策の転換や市民生活重視の行政改革は、選挙後も名護市の重要な政治課題として残ります。
開票結果と得票数は名護市選挙管理委員会の公式資料、候補者情報は琉球新報の選挙特集でも確認できます。
【候補者公約比較】渡具知・翁長・伊波の政策は何が違った?
2026年の名護市長選挙で有権者が判断を迫られたのは、辺野古問題だけではありません。毎月の生活費に影響する物価高対策、子育て世帯の負担軽減、高齢者の移動手段、公共施設の整備など、身近な行政サービスも大きなテーマでした。
3候補はいずれも子育て支援の必要性を訴えましたが、政策の実現方法や財源に対する考え方には明確な違いがありました。
3候補のプロフィールと政策の相関関係
出典:琉球放送(TBS NEWS DIG)、琉球朝日放送、琉球新報の候補者政策報道。政策は選挙期間中に掲げられた公約の要約であり、実施済みの施策を示すものではありません。
渡具知武豊氏:国との連携と継続的な市政運営
渡具知氏が強調したのは、2期8年間の行政運営で積み重ねてきた実績と、国との連携を生かした政策実現です。
代表的な政策が、子どもの医療費、学校給食費、保育料の3つの無償化です。これらを継続しながら、物価高対策として過去最高額の商品券を配布する方針や、高校3年生までの子ども1人につき2万円を支給する子育て応援手当を掲げました。
高齢者支援では、タクシー券の配布や帯状疱疹ワクチンの接種負担軽減、障害者雇用の拡大などを提案。名護湾沿岸の再開発や中心市街地の総合交通ターミナル整備も盛り込みました。
渡具知氏は選挙戦で、自身が市民に掲げた公約の約9割を達成したと主張。QABの報道では、次のように訴えています。
市民に掲げた公約の約9割をこれまで達成をし、掲げた公約をしっかりと実現してまいりたい。
この達成率は候補者本人の選挙期間中の説明であり、個々の公約については、達成の定義や事業の継続状況を分けて確認する必要があります。
翁長久美子氏:市民生活重視と辺野古反対を明確化
翁長氏は元名護市議で、2010年から2025年まで市議を4期務めました。選挙では、基地関連の交付金に依存しない市政運営と、市民生活を優先する行政への転換を訴えました。
子育て支援では、既存の3つの無償化を継続するだけでなく、保育所へのおむつ支給や18歳までの公共バス料金無料化を提案。加えて、給付型奨学金の拡充や子ども食堂への支援も掲げました。
物価高対策では水道料金の基本料金免除や、国の子育て応援手当への市独自の5,000円上乗せを提案しています。高齢者向けには路線バスの無料化または割引制度を掲げ、介護士や保育士の待遇改善にも重点を置きました。
地域経済では、公共工事の入札制度を見直し、市内の中小事業者が受注しやすい仕組みをつくることを目指しました。辺野古新基地建設には明確に反対する姿勢を示しています。
政策の特徴は、現行施策を維持しながら、市民に直接届く支援を追加することにあります。一方で、再編交付金に頼らずに同水準の無償化や福祉サービスを継続するには、安定した代替財源の確保が必要です。
伊波勝也氏:新庁舎計画を見直し、子育てへ予算を振り向ける構想
伊波氏は名護市三原出身で、琉球大学を卒業後、1991年に家庭教師センタースタディを設立した学習塾経営者です。
選挙で中心に据えたのは、市役所新庁舎建設計画の延期でした。建設費や不動産価格が高騰している時期に新庁舎を建設する必要はないとし、計画を見直すことで生まれる財政的な余地を子育て支援に回すべきだと訴えました。
また、2人目、3人目の子どもを安心して育てられる環境づくりや、食料自給に向けた第一次産業の振興も公約に盛り込みました。
一方、選挙結果は228票にとどまりました。政策の一部が他候補と重なっていても、新人候補が有権者に政策の実現可能性や市政運営能力を伝える難しさが表れた結果でもあります。
【辺野古新基地建設問題】名護市長選挙と米軍普天間飛行場移設の関係
名護市長選挙を理解するうえで避けて通れないのが、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画です。
普天間飛行場の移設を巡っては、沖縄県内で長年にわたり賛否が対立してきました。辺野古沿岸部での新基地建設は、沖縄の基地負担、自然環境、地域経済、国と県の関係など複数の問題が交差する政策課題です。
2014年から2026年までの名護市長選挙の変化
過去の選挙結果を振り返ると、辺野古問題が名護市長選挙の重要な政治的背景になってきたことが分かります。
- 2014年:辺野古移設反対を掲げた稲嶺進氏が19,839票で再選。末松文信氏の15,684票を上回りました。
- 2018年:渡具知武豊氏が20,389票を獲得して初当選。現職の稲嶺進氏は16,931票でした。
- 2022年:渡具知氏が19,524票を獲得し、岸本洋平氏の14,439票を上回って再選。
- 2026年:渡具知氏が20,009票を獲得。翁長氏に9,466票差をつけて3選しました。
2018年の選挙では、稲嶺氏が辺野古新基地問題を主要争点に掲げた一方、渡具知氏は基地問題への言及を抑え、経済政策を前面に出しました。QABの当時の報道でも、基地問題が争点化しなかったことが選挙戦の特徴として伝えられています。
2026年も、両候補の姿勢は対照的でした。翁長氏は移設反対を明確に打ち出し、渡具知氏は賛否を明言せず、基地に関連する問題について政府に伝え、周辺住民の生活環境を守るという立場を示しました。
オール沖縄と政党推薦の構図
今回の選挙では、翁長氏を共産党、立憲民主党、社民党、沖縄社会大衆党が推薦しました。翁長氏は、辺野古移設反対を掲げる政治勢力「オール沖縄」の支援を受けた候補として位置づけられました。
対する渡具知氏は、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の推薦を受けました。現職としての行政実績に加え、国政政党との連携や国からの交付金を活用する財源戦略を強調しました。
この構図は、単純な基地賛成・反対の二者択一ではありません。市民にとっては、基地政策に対する姿勢と、子育て支援や福祉を実現するための財源をどう確保するかという二つの判断が同時に求められた選挙でした。
市長選挙の結果だけで辺野古問題が決着したわけではない
重要なのは、渡具知氏の3選をもって名護市民全員が辺野古移設に賛成したと解釈することはできない点です。
渡具知氏は移設の賛否を明言せず、選挙では子育て支援や経済政策も訴えました。投票者が何を最も重視して一票を投じたかは、得票数だけでは特定できません。
また、辺野古の工事を巡る国と沖縄県の対立や、基地負担に関する政策判断は、名護市長選挙だけで決まるものではありません。国、沖縄県、名護市それぞれの行政上の役割と権限を区別して考える必要があります。
【投票率60.75%】過去最低となった理由と2022年との比較
2026年の名護市長選挙で、もう一つ見逃せない数字があります。それが60.75%という投票率です。
琉球新報の報道によると、この投票率は前回2022年の68.32%を7.57ポイント下回り、5町村の合併によって現在の名護市が発足した1970年以降の市長選挙で最低となりました。
過去の投票率と当選者の推移
| 投票日 | 主な当選者 | 得票数 | 投票率 |
|---|---|---|---|
| 2014年1月19日 | 稲嶺進氏 | 19,839票 | 76.71% |
| 2018年2月4日 | 渡具知武豊氏 | 20,389票 | 76.92% |
| 2022年1月23日 | 渡具知武豊氏 | 19,524票 | 68.32% |
| 2026年1月25日 | 渡具知武豊氏 | 20,009票 | 60.75% |
数字を並べると、2018年から2026年にかけて投票率が大きく下がっていることが分かります。特に2022年から2026年にかけての低下は7.57ポイントに達しました。
一方、渡具知氏の得票数は2018年の20,389票、2022年の19,524票、2026年の20,009票と、3回の選挙でおおむね2万票前後を維持しています。
つまり、今回の大差は現職の得票数が急激に増えたことだけでは説明できません。対立候補の得票数や投票率、候補者の構図など、複数の要素を合わせて見る必要があります。
期日前投票は18,080人
名護市選挙管理委員会の公表資料によると、2026年1月19日から24日までの期日前投票者数は合計18,080人でした。
内訳は男性8,562人、女性9,518人です。投票日当日に投票所へ行けない人が事前に投票できる制度は、名護市でも多く利用されました。
ただし、期日前投票の人数が多いことと、選挙全体の投票率が高いことは別の問題です。今回の選挙では期日前投票が一定数あった一方、最終投票率は過去最低となりました。
投票率低下は市政への無関心を意味するのか
投票率の低下を、そのまま市民の政治離れと断定することはできません。選挙の争点、候補者への評価、選挙日程、生活環境、投票行動の変化など、複数の要因が考えられるためです。
今回の選挙では、現職の継続か市政刷新かという構図が明確でした。しかし、投票率が低下したという事実は、選挙結果の大きさとは別に、今後の市政が幅広い市民の声をどのように行政へ反映するかという課題を示しています。
【渡具知武豊氏の3期目】名護市の物価高対策・子育て・地域振興はどうなる?
渡具知氏の3選によって、名護市はこれまでの市政運営を基本的に継続することになりました。今後の焦点は、選挙期間中に掲げた政策を実際の予算や行政サービスに落とし込めるかどうかです。
1. 物価高対策と家計への直接支援
渡具知氏は商品券の配布や子ども1人当たり2万円の応援手当を掲げました。物価上昇が続くなか、食料品や日用品、光熱費などの負担を軽減する施策は、幅広い世帯に関係するテーマです。
ただし、商品券や一時的な給付は、実施時期や金額によって家計への効果が変わります。継続的な生活支援につなげるには、給付対象、財源、実施期間を明確にすることが必要です。
2. 子育て支援の継続と財源の安定性
名護市の子ども医療費、学校給食費、保育料の3つの無償化は、渡具知市政が掲げる代表的な実績です。3期目では、これらの施策を継続しながら、保育士の処遇改善や待機児童対策、新給食センターでのアレルギー除去食対応などを進める方針が示されました。
ここで重要になるのが財源です。今回の選挙では、米軍再編交付金など国からの交付金を活用した子育て支援の継続性が争点の一つになりました。
翁長氏は交付金に依存しない財源づくりを主張しましたが、渡具知氏は国との連携を通じて必要な予算を確保する考えを示しました。
両者の違いは、無償化を実施するかどうかだけではありません。国の交付金を活用する財政運営と、市独自の財源を組み立てる財政運営のどちらを重視するかという、行政の基本設計の違いでもあります。
3. 高齢者福祉と医療サービス
高齢者支援では、タクシー券の配布やワクチン接種の負担軽減、ワンストップ福祉窓口の設置などが公約に盛り込まれました。
名護市内でも、公共交通へのアクセスや医療機関への移動は、高齢者の日常生活に直結します。支援制度を整えるだけでなく、実際に利用しやすい仕組みになっているか、対象者に制度が周知されているかが評価のポイントです。
4. 名護湾沿岸と中心市街地の地域振興
渡具知氏は名護湾沿岸エリアの再開発や、道の駅、スポーツ施設を活用したにぎわいづくりを提案しました。また、市中心部では総合交通ターミナルを整備し、商店街や公共空間との一体的な再開発を目指しています。
地域振興策の評価では、施設を建設すること自体がゴールになってはいけません。地元企業の受注、雇用の創出、観光客の消費、市民の日常的な利用につながるかが重要です。
翁長氏が提案した市内中小企業への公共工事の発注機会拡大や、伊波氏が主張した第一次産業の振興も、地域経済の循環という点では共通する問題意識を持っています。
3期目の市政では、大型開発と市民生活への直接支援をどのように両立させるかが問われます。
【プロの結論】名護市長選挙の9466票差が示した本当の意味
今回の選挙結果を読み解く際、最も重要なのは、得票差だけを見て政治的な勝敗の意味を決めつけないことです。
渡具知氏の20,009票は、現職としての行政実績や国との連携を重視する有権者の支持を集めた結果です。一方、翁長氏の10,543票は、辺野古新基地建設への反対や市民生活を中心とした市政への転換を求める有権者の意思を示しています。
9,466票という差は明確な勝敗を示しますが、その差をすべて基地問題への賛否に結び付けることはできません。物価高対策や子育て支援、福祉、地域振興など、複数の争点が同時に存在していたためです。
今後の市政を評価するための5つの判断基準
3期目の渡具知市政を評価する際には、次の5点を継続的に確認が必要です。
1. 公約の実行状況: 商品券や子育て応援手当などが、いつ、誰に、どのような条件で実施されるか。
2. 財源の持続性: 国の交付金に依存する施策について、交付金の変動に備えた財政計画があるか。
3. 子育て支援の実効性: 無償化の継続だけでなく、保育士不足や待機児童などの課題が改善するか。
4. 高齢者福祉の利用状況: 移動支援や医療サービスが、必要とする市民に実際に届いているか。
5. 地域振興の経済効果: 大型開発が地元企業の受注や雇用、市内消費の増加につながっているか。
加えて、辺野古新基地建設問題については、市長の発言だけでなく、国や沖縄県の判断、工事の進捗、周辺住民の生活環境への影響を継続して確認する必要があります。
選挙は4年間の行政運営を委ねる機会ですが、当選した候補者に白紙委任することを意味しません。市民が選挙後も政策の進捗を確認できる環境が、地方自治の質を左右します。
【名護市長選挙に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年の名護市長選挙で当選したのは誰ですか?
A1:現職の渡具知武豊氏です。2026年1月25日の投開票で20,009票を獲得し、3選を果たしました。
Q2:翁長久美子氏の得票数は何票でしたか?
A2:10,543票です。渡具知氏との差は9,466票でした。翁長氏は辺野古新基地建設への反対や、子育て・高齢者福祉の充実を訴えました。
Q3:伊波勝也氏は何票を獲得しましたか?
A3:228票です。市役所新庁舎建設計画の延期や、子育て支援を優先する予算配分などを掲げて立候補しました。
Q4:名護市長選挙2026の投票率は何%でしたか?
A4:60.75%です。前回2022年の68.32%から7.57ポイント低下し、1970年以降の名護市長選挙で最低となりました。
Q5:渡具知武豊氏は辺野古新基地建設に賛成していますか?
A5:2026年の選挙では、渡具知氏は辺野古移設への賛否を明言しませんでした。基地に関連する問題を政府に伝え、周辺住民の生活環境を守るという姿勢を示しています。一方、翁長氏は新基地建設に明確に反対していました。
Q6:渡具知市政の子育て支援にはどのような実績がありますか?
A6:子どもの医療費、学校給食費、保育料の3つの無償化が代表的な施策です。3期目も継続する方針を示し、保育士の処遇改善や待機児童ゼロなども公約に掲げました。
Q7:次の名護市長選挙はいつですか?
A7:市長の任期は4年間です。2026年1月の選挙で3選した渡具知氏の任期満了を踏まえると、次回は2030年前後が目安となります。正式な選挙日程は今後の選挙管理委員会の発表で確認する必要があります。
まとめ:名護市長選挙2026の結果と今後の市政を見守るポイント
2026年1月25日の名護市長選挙は、渡具知武豊氏が20,009票を獲得し、翁長久美子氏に9,466票差をつけて3選を果たしました。伊波勝也氏は228票、投票率は60.75%でした。
今回の選挙では、辺野古新基地建設問題という沖縄の重要課題に加え、物価高対策、子育て支援、高齢者福祉、地域振興など、市民生活に直結するテーマが競われました。
渡具知氏は国との連携とこれまでの市政実績を前面に出し、翁長氏は基地政策の転換と市民目線の行政を訴えました。伊波氏は新庁舎建設の見直しと子育て支援への予算配分を主張しました。
3選によって継続性が選択された名護市政ですが、今後の評価を決めるのは選挙時の公約ではなく、その実行結果です。無償化の持続性、物価高への対応、福祉サービスの充実、地域経済への波及効果、そして辺野古を巡る問題への対応が、3期目の大きな評価軸となります。
9466票差という結果を出発点に、選挙後の政策実行と市民生活の変化を追い続けること。それが、2026年の名護市長選挙を正しく理解するための重要な視点です。