ホーム 映画・ドラマ 【行定勲監督の演出】原作と映画の違いは?実写化で加えられた工夫

【行定勲監督の演出】原作と映画の違いは?実写化で加えられた工夫

大槻 莉子 大槻 莉子 • 更新: • 公開: • 読了約 13 分
目次

監督を務めたのは、『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』『ナラタージュ』などで知られる行定勲です。

脚本は瀬戸山美咲が担当。撮影は槇憲治、配給はキノフィルムズです。

本作の特徴は、原作のストーリーを大切にしながら、漫画では表現できない映画独自の仕掛けを取り入れたことにあります。

原作と映画の主な違い

比較項目 原作漫画 2018年映画
基本ストーリー ハルナと山田を中心とした青春群像 原作の物語を忠実に映像化
登場人物 岡崎京子が描いた人物像 二階堂ふみら俳優が実写で表現
インタビュー なし 登場人物へのインタビュー場面を追加
画面構成 漫画のコマ割り 4:3のスタンダードサイズ
時代の表現 1990年代の若者文化 90年代の空気や風景を意識した映像
心理描写 モノローグやコマの間で表現 表情、演技、映像、インタビューで表現

映画独自のインタビューシーン

映画版で特に目を引くのが、登場人物たちがカメラに向かって自分自身について語るインタビュー形式の場面です。

これは原作漫画には存在しない映画独自の演出です。

通常の映画では、登場人物の心理は会話や行動を通じて描かれます。しかし本作では、物語の途中にインタビューを挿入することで、人物の内面を別の角度から見せています。

興味深いのは、俳優本人の言葉なのか、役柄としての発言なのか、その境界が曖昧になることです。

観客はフィクションを見ているはずなのに、実在する若者たちの告白を聞いているような感覚を覚えます。

CINEMAS+の作品解説でも、このインタビュー演出は原作にはない重要な追加要素として取り上げられています。

なぜ画面サイズを4:3にしたのか

もう一つの特徴が、一般的な横長の映画画面ではなく、4:3のスタンダードサイズを採用したことです。

行定監督は週刊文春のインタビューで、この画面比率を選んだ理由について、登場人物を取り巻く閉塞感を表現するためだと説明しています。

横方向の広がりを抑えた画面では、人物が中央に配置され、周囲の空間が狭く感じられます。

この視覚的な制約が、登場人物たちの逃げ場のない心理状態と重なります。

加えて、監督は原作に登場する風景を再現するため、ロケーション探しにも時間をかけました。

つまり、本作の実写化は単純に漫画の絵を再現する作業ではありません。原作が持つ閉塞感や不安定さを、画面の構図や撮影場所によって映画の言語に置き換えた作品なのです。

【二階堂ふみの演技の評判】作品評価と映画ファンの感想を検証

リバースエッジ二階堂ふみ

二階堂ふみの演技については、作品の持つ独特な雰囲気を成立させる重要な要素として評価されています。

本作で求められたのは、単に悲しみや怒りを強く表現する演技ではありません。

他人の苦しみを目の前にしても、自分自身の感情をうまく整理できない若者の姿を自然に表現することでした。

二階堂ふみの演技で評価される3つのポイント

1.感情を説明しすぎない表現

ハルナは、周囲で起きる出来事に対して、いつも明確な反応を示す人物ではありません。

二階堂は、表情や視線の変化を通じて、ハルナの複雑な心理を表現しています。

2.身体性を伴った演技

本作には、性や暴力などを扱う刺激の強い描写があります。

二階堂は、そうした題材から目をそらさず、ハルナという人物の現実感を支える演技を見せています。

3.吉沢亮との距離感

山田とハルナは、一般的な恋愛映画の男女とは異なる関係を築きます。

二階堂と吉沢の演技は、親密さと距離感が同時に存在する2人の関係を印象づけています。

映画評論家の評価はどうだった?

シネマトゥデイが掲載した映画短評では、4人のライターによる平均評価は5点満点中4.3点でした。

評価されたのは、原作の世界観を尊重した映画化、1990年代の空気を再現した映像、そして俳優陣の表現力です。

一方で、作品の評価は完全に一致しているわけではありません。

インタビューシーンについては、登場人物の内面を深める効果を評価する意見がある一方、物語への没入を妨げるという見方もありました。

4:3の画面構成についても、閉塞感を表現する効果を認める意見と、窮屈に感じるという意見に分かれています。

作品の評価が分かれる理由

『リバーズ・エッジ』は、一般的な青春映画のように、登場人物が問題を乗り越えて成長する物語ではありません。

むしろ、問題を抱えた若者たちが、他人との関係の中でさらに傷ついていく姿を描いています。

そのため、鑑賞者が期待するものによって評価が変わります。

評価の観点 肯定的な見方 否定的な見方
原作の再現 原作の空気感を大切にしている 原作に忠実すぎる
俳優の演技 繊細で存在感がある 感情移入しにくい
インタビュー 心理描写に深みが出る 物語の流れを中断する
映像表現 閉塞感が伝わる 画面が窮屈に感じる
ストーリー 若者の孤独を鋭く描く 重く、後味が厳しい

本作を高く評価する人は、原作の精神や映像表現に注目する傾向があります。一方、分かりやすい物語展開や爽快感を期待する人には、厳しい作品可能性があります。

作品の評価を判断するときは、単純な点数だけでなく、何が評価され、何が批判されているのかを見ることが大切です。

【ベルリン国際映画祭で受賞】海外でも評価された理由とは?

映画『リバーズ・エッジ』は、日本国内だけでなく海外の映画祭でも上映されました。

特に注目されたのが、2018年の第68回ベルリン国際映画祭です。

本作はパノラマ部門のオープニング作品に選ばれ、さらに国際批評家連盟賞(FIPRESCI賞)を受賞しました。

国際批評家連盟賞とは?

FIPRESCIは、国際批評家連盟を指す名称です。

映画批評家による国際的な組織で、映画祭などで作品を評価し、独自の賞を授与しています。

本作の受賞は、ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に関連する国際批評家連盟賞です。

ここで注意したいのは、ベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞を受賞したわけではないという点です。

映画祭への出品、部門のオープニング作品への選出、批評家連盟賞の受賞は、それぞれ異なる実績です。

JFDBの映画祭・受賞歴にも、2018年のベルリン国際映画祭パノラマ部門オープニング作品および国際批評家連盟賞の記録があります。FIPRESCIの公式受賞記録にも作品名が掲載されています。

海外で注目された作品の特徴

海外の観客にとっても、本作のテーマは理解しやすい部分があります。

- 若者の孤独と社会からの疎外感
- 性的指向や人間関係をめぐる葛藤
- 生きている実感を求める若者の心理
- 1990年代の日本の若者文化
- 漫画の表現を映画へ置き換えた独特の映像演出

特定の日本の時代背景を描きながら、人間の孤独や生と死という普遍的なテーマを扱っている点が、海外の映画祭でも紹介する価値のある要素になっています。

また、二階堂ふみが企画段階から関わった作品であることも、映画の制作背景を語るうえで重要です。

2018年から2026年までの作品の歩み

年 出来事
1993年 岡崎京子の原作漫画が『CUTiE』で連載開始
1994年 漫画の連載終了、宝島社から単行本刊行
2018年1月 完成披露試写会で映画化の経緯が明らかになる
2018年2月 ベルリン国際映画祭パノラマ部門のオープニング作品に選出
2018年2月16日 日本国内で劇場公開
2018年 ベルリン国際映画祭でFIPRESCI賞受賞
2018年8月8日 Blu-ray・DVD発売
2026年 公開から8年を迎え、原作と映画を振り返ることができる

出典:岡崎京子作品資料、JFDB、アスミック・エース、MANTANWEB、FIPRESCI。

【よくある質問】リバーズ・エッジと二階堂ふみに関するFAQ

Q1:映画『リバーズ・エッジ』で二階堂ふみは何役を演じていますか?

A1:主人公の女子高校生・若草ハルナ役です。山田一郎をいじめから助けたことをきっかけに、河原に放置された死体の秘密を知り、周囲の若者たちとの複雑な関係に巻き込まれていきます。

Q2:映画『リバーズ・エッジ』の公開日はいつですか?

A2:2018年2月16日です。上映時間は118分で、映倫区分はR15+です。15歳未満は鑑賞できない指定になっています。

Q3:原作漫画を描いたのは誰ですか?

A3:漫画家の岡崎京子です。1993年3月号から1994年4月号まで月刊『CUTiE』で連載され、1994年に宝島社から単行本が刊行されました。

Q4:吉沢亮はどのような役を演じていますか?

A4:山田一郎役です。学校でいじめられている同性愛者の男子高校生で、河原の死体を秘密の宝物として扱っています。ハルナとの出会いが物語の重要な転換点になります。

Q5:二階堂ふみが映画化を提案したというのは本当ですか?

A5:本当です。2018年の完成披露試写会で行定勲監督が明らかにしています。二階堂は16歳のときに原作と出会い、その後、映画化を提案しました。企画から完成披露までは約6年半かかったと本人が説明しています。

Q6:ベルリン国際映画祭では何の賞を受賞しましたか?

A6:第68回ベルリン国際映画祭において、国際批評家連盟賞(FIPRESCI賞)を受賞しました。パノラマ部門のオープニング作品にも選ばれています。金熊賞とは別の賞です。

Q7:原作漫画と映画の大きな違いは何ですか?

A7:基本的な人物設定や物語は原作に忠実ですが、映画では登場人物へのインタビューシーンが追加されています。また、4:3の画面比率を採用するなど、映画ならではの演出が取り入れられています。

まとめ:二階堂ふみの情熱が実現させた『リバーズ・エッジ』の魅力

映画『リバーズ・エッジ』は、二階堂ふみが若い頃に出会った岡崎京子の漫画を映画化したいという思いから始まった作品です。

若草ハルナという人物を通して描かれるのは、単純な恋愛や友情ではありません。孤独、欲望、暴力、性、生と死など、若者たちが抱える複雑な問題です。

吉沢亮、SUMIRE、上杉柊平、森川葵、土居志央梨らの共演によって、物語は一人の主人公だけでは表現できない群像劇として成立しています。

行定勲監督は、原作に敬意を払いながら、4:3の画面構成やインタビュー演出という映画独自の表現を加えました。その挑戦はベルリン国際映画祭でのパノラマ部門上映とFIPRESCI賞受賞にもつながっています。

2026年に本作を鑑賞するなら、次の3つの視点を意識すると理解が深まります。

1. 二階堂ふみの演技に注目する人: ハルナの感情を直接説明しない表情や、山田との距離感を見る。
2. 岡崎京子の原作ファン: 漫画のコマやモノローグが、映像と俳優の身体表現にどう置き換えられたかを比較する。
3. 映画表現に関心がある人: 4:3の画面構成とインタビューシーンが、作品の閉塞感にどう作用しているかを考える。

一方、明るい青春映画や分かりやすい恋愛ドラマを期待する人には、刺激の強い描写や重いテーマが負担になる可能性があります。R15+指定であることも、鑑賞前に知っておきたいポイントです。

『リバーズ・エッジ』の価値は、単に人気俳優が出演した2018年の映画というだけではありません。1990年代に岡崎京子が漫画で描いた若者の孤独を、二階堂ふみと行定勲監督が映画という別の表現に変換したことにあります。

二階堂ふみが若草ハルナを演じた理由、原作への思い、そして映画化によって生まれた新しい表現。この3つを結びつけて見ることで、本作の魅力はさらに鮮明になります。


主な参考資料:アスミック・エース作品情報、日本映画データベース(JFDB)、宝島社書誌情報、FIPRESCI公式受賞記録、MANTANWEB、ORICON NEWS、シネマトゥデイ、週刊文春、mi-mollet。

同じカテゴリの記事

大槻 莉子
コンテンツディレクター 大槻 莉子
プロフィールを見る →

人物プロフィール担当として9年以上の取材経験。profile領域の公式発表・配信元の告知を一次情報として確認し、確認できない情報は記事に含めない方針です。

おすすめの関連記事